異国で出合った「テリヤキバーガー」発明のヒント

“突然変異”で誕生したグローカルメニュー

2012.10.26(Fri) 澁川 祐子
筆者プロフィール&コラム概要

 大手ファストフードチェーンの定番メニュー、テリヤキバーガー。東アジアでは「サムライバーガー」と呼ばれ、ずいぶん定着していると聞く。

 甘辛くこってりとした醤油ベースのタレにつけたパテ。濃い味をやわらげるためのレタス。それらをバンズに挟み込んだハンバーガー。店によってパテがチキンになっていたり、マヨネーズがのっていたり多少の違いはあるが、テリヤキバーガーと言えば、おおよそそんなところだ。

 私はあのネバつく甘さが苦手で、口にすることは滅多にない。だが、ずっとメニューにあることからして、きっと世間では根強い人気があるのだろう。一度舌になじむとやみつきになる味なのかもしれない。

 照り焼きと言えば、醤油、酒、みりん、砂糖を合わせたタレをつけながら焼く料理を広く指す。タレの糖分が熱によって食材の表面にテリを出すことからそう呼ばれる。

 照り焼きは、鰤や鶏肉を使ったごく一般的な和食だ。家庭で作る、普段のおかずというイメージだろう。だが、それがバーガーに応用されると、とたんにファストフード店で食べるものになり、ジャンク感が出る。テリヤキバーガーは、元ネタとはずいぶん印象が違う“突然変異型”の料理だ。

 突然変異はどうして起きたのか。単に日本人がハンバーガーを和風にアレンジしたということなのだろうか。今回は元祖「和風バーガー」の源流を追ってみよう。

ハンバーガーのルーツはイギリスとドイツ

 本題に入る前に、少しハンバーガーの歴史に触れておきたい。

 挽肉を使ったパテをバンズで挟むハンバーガーは、アメリカで生まれた。だが、その誕生については諸説ある。

 まずは1885年にウィスコンシン州シーモアでティーンエイジャーのチャーリー・ナグリーンが薄く切ったパンの間にミートボールを挟み、品評会で売ったという説。同年、ニューヨーク州ハンバーグでオハイオ出身のメンチェス兄弟が、牛挽肉のサンドウィッチを品評会で売ったとする説もある。最も有名なのは、1904年にテキサス州アセンズ出身のフレッチャー・デイビスがセントルイス万国博覧会で、ハンバーガーサンドウィッチを売ったという説だ。

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1974年、神奈川県生まれ。東京都立大学人文学部を卒業後、フリーのライターとして食や工芸・デザインを中心に、読むこと、食べること、暮らすことをテーマとしたインタビューやルポ、書評を執筆。『森正洋の言葉。デザインの言葉。』(ナガオカケンメイ監修、美術出版社)、『最高に美しいうつわ』(SML監修、エクスナレッジ)の取材構成ほか、近著に当連載をまとめた『ニッポン定番メニュー事始め』(彩流社)がある。


食の源流探訪

日本人が日常茶飯としている定番食。あまたある食べものの中で、
なぜそれが定番になり得たのか。どのように日本化されていったのか。
「新・日本食」の源流からの流れを、歴史をひもときながら考察する。