大手ファストフードチェーンの定番メニュー、テリヤキバーガー。東アジアでは「サムライバーガー」と呼ばれ、ずいぶん定着していると聞く。
甘辛くこってりとした醤油ベースのタレにつけたパテ。濃い味をやわらげるためのレタス。それらをバンズに挟み込んだハンバーガー。店によってパテがチキンになっていたり、マヨネーズがのっていたり多少の違いはあるが、テリヤキバーガーと言えば、おおよそそんなところだ。
私はあのネバつく甘さが苦手で、口にすることは滅多にない。だが、ずっとメニューにあることからして、きっと世間では根強い人気があるのだろう。一度舌になじむとやみつきになる味なのかもしれない。
照り焼きと言えば、醤油、酒、みりん、砂糖を合わせたタレをつけながら焼く料理を広く指す。タレの糖分が熱によって食材の表面にテリを出すことからそう呼ばれる。
照り焼きは、鰤や鶏肉を使ったごく一般的な和食だ。家庭で作る、普段のおかずというイメージだろう。だが、それがバーガーに応用されると、とたんにファストフード店で食べるものになり、ジャンク感が出る。テリヤキバーガーは、元ネタとはずいぶん印象が違う“突然変異型”の料理だ。
突然変異はどうして起きたのか。単に日本人がハンバーガーを和風にアレンジしたということなのだろうか。今回は元祖「和風バーガー」の源流を追ってみよう。
ハンバーガーのルーツはイギリスとドイツ
本題に入る前に、少しハンバーガーの歴史に触れておきたい。
挽肉を使ったパテをバンズで挟むハンバーガーは、アメリカで生まれた。だが、その誕生については諸説ある。
まずは1885年にウィスコンシン州シーモアでティーンエイジャーのチャーリー・ナグリーンが薄く切ったパンの間にミートボールを挟み、品評会で売ったという説。同年、ニューヨーク州ハンバーグでオハイオ出身のメンチェス兄弟が、牛挽肉のサンドウィッチを品評会で売ったとする説もある。最も有名なのは、1904年にテキサス州アセンズ出身のフレッチャー・デイビスがセントルイス万国博覧会で、ハンバーガーサンドウィッチを売ったという説だ。