10月17日午後2時、カンボジアの首都プノンペンにノロドム・シアヌーク元国王の遺体が中国の北京から到着した。空港から首相府に向かう幹線道路や独立記念塔が立つシアヌーク通り周辺は通行止めになり、約10万人の喪章をつけた市民が元国王の到着を出迎えた。

シアヌーク元国王の死は歴史の大きな転換点

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 この日を境に、不思議とプノンペンは雨がほとんど降らない日が続くようになった。本格的な乾季に入り始めたということだろうが、信心深いカンボジア国民は、天の涙が出尽くしたと思ったに違いない。

 いまや著しい経済発展を遂げ始めているカンボジア経済。その発展を担っている経済人の多くは、シアヌーク元国王(殿下=国王に即位したあとその座を父であるノロドム・スラマリット氏に譲り自らは首相になって実際の執政者となったためこの呼称が使われることも多い)の死は、古いカンボジアの終わりと受け止める人が多い。

 「周辺のタイやベトナムが急速な発展を遂げるなか、カンボジアはその忌まわしい過去もあって外資が進出を躊躇し、取り残されてきた感がある」

 「元国王の死は国民にとって悲しいことに違いないが、新しいカンボジアが幕を開けるきっかけにもなってほしい」

 三菱東京UFJ銀行の服田俊也・プノンペン駐在所長はこのように話す。

 カンボジアと言えば、クメール・ルージュを誰しも即座に思い浮かべる。

 赤いクメール人を意味する言葉で名付け親はシアヌーク元国王だ。カンボジア共産党、別名をリーダーの名前を取ってポルポト派とも呼ばれる。

 「クメール・ルージュは、カンボジア全土に300以上ものキリングフィールド、大量処刑場を作り、300万人以上の国民を虐殺した。当時の人口は約800万人。国民の3分の1以上が虐殺されたことになる」

 首都プノンペンにあるカンボジア最大のキリングフィールド、チュンエク大量虐殺センターの解説はこのように語る。