先週はサンフランシスコからワシントンに飛んだ。乗客を養鶏場のニワトリのごとく扱う米国国内線フライトはお世辞にも快適とは言えない。搭乗前の手荷物検査も、靴を脱ぎズボンのベルトまで外す屈辱的なものだ。それでも、米国人乗客がこれに淡々と従う姿には感動した。
今回ワシントンでは話題を絞った。週末を挟んで3日しか実働日がなかったからだ。大統領選挙と中国問題を中心に、過去20年間付き合ってきた旧友たちから話を聞いた。今回は現地で筆者が見聞きしたワシントンの対中認識についてご報告する。
中国のプロパガンダ攻勢
ワシントンに行くたびに思うのは、米国政府内外の中国を見る目が年々厳しくなっていることだ。
10月8日出発の日には、安全保障上の理由から中国通信大手の華為技術、中興通訊と取引しないよう求めた米下院インテリジェンス特別委員会の報告書が出ていた。
華為技術(Huawei)と中興通訊(ZTE)については6月に既に書いた(「中国通信機器大手の憂鬱~中国株式会社の研究・168」)ので、ここでは繰り返さない。
今回筆者がまず危機感を覚えたのは、ワシントンで中国と韓国による「反日宣伝工作」とも呼べる活動が顕著になりつつあることだった。
典型例は9月28日付ワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズ、ロサンゼルス・タイムズの「釣魚諸島は中国に帰属(Diaoyu Islands Belong to China)」と題する全面広告だ。広告主は中国の英字紙チャイナ・デイリーだが、スポンサーが中国政府であることは明白だろう。
今回会った旧友たちは、アジア専門家と非専門家で、言うことが180度違った。アジア専門家たちは中国の主張が間違いであることを概ね知っていたが、ある中東専門家の旧友に至っては、「あの島は中国のものじゃなかったのかい?」と真顔で尋ねてきた。
案の定、彼もニューヨーク・タイムズを読んでいた。米国でアジア専門家は弱小集団だ。その首都ワシントンで、一般市民どころか、国際問題に詳しい専門家ですら、中国の「尖閣=中国領」プロパガンダがかなり浸透していることに強いショックを受けた。