連載「変化と進化を先読みする~メディアの未来」は、デジタル化とスマート化が加速する中、メディアおよびメディアビジネスはどう変化しようとしているのかリポートします。

Webメディアが隆盛を極めた15年間、ここにきてようやく変化の兆しが見えてきたことに、前稿『「フリーミアム』はメディアビジネスを変えたか?』で触れました。

 おさらいをすると、1)アプリ(メディア)の台頭、2)ソーシャルメディアの台頭、3)広告経済の頭打ち、という3大要素が、Webメディアの「変化」の背景にあり、それらが絡まり合って新しいメディアの潮流を生み出していると見るべきだということです。

 さて連載11回目の本稿では、このような変化を背景に、新しい息吹きを感じさせるメディアがWebの世界に続々と現れていることに着目します。

Point Webメディアの転換期を体現する新メディアに注目

乗客が置き忘れたiPadを自宅に、客室乗務員を逮捕 アプリで発見

タブレット型など携帯端末の進化が閲読体験の変化をもたらしている〔AFPBB News

 最初に、まず概念的な議論を説明しましょう。本論でも時折取り上げる長谷川恭久氏のブログからです。

変化する媒体、進化するクリエイティブ(could)

 この論では、媒体形式の特性が変化する時期には、特性の異なる新しい媒体に過去の常識が通じないことをもって制約、すなわちマイナスと論じられることが多いと述べます。

 音楽で言えば、CD販売が大前提であった時代から、楽曲単位でのダウンロード販売や、今後盛んになるであろうストリーミング型(曲単位ではなくチャンネル単位での)購買などへと変化していく時期には、アーティストがそれに戸惑う一方、新しいスタイルを生み出そうという潮流もやがて誕生するというわけです。氏も書いているように、これはWebメディアでも同様のことが生じている可能性があります。

 筆者も、長谷川氏がまさに指摘するように、Webメディアをめぐる変化の中で、徐々に新しいメディアの形式が見え隠れし始めたと感じています。

 そのような息吹きを感じさせるメディアをまず手短にいくつか紹介します。

T-Magazine The New York Times Style Magazine

 T-Magazineは、ニューヨーク・タイムズが、NYTimes.comの兄弟、姉妹サイトとして運営するいくつものWebサイトの1つで、ファッションやライフスタイルをテーマとするものです。