マット安川 今回は中国取材から戻ったばかりの評論家・宮崎正弘さんをゲストにお迎えし、日中関係や韓国・フィリピンでくすぶる外交問題など、現地で得た情報をもとに詳しくお伺いしました。

50万都市のはずが人口2万8000人・・・中国バブル崩壊近し

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:宮崎正弘/前田せいめい撮影宮崎 正弘(みやざき・まさひろ)氏
評論家、作家。国際政治・経済の舞台裏を解析する論評やルポルタージュを執筆。中国ウォッチャーとしての著作の他、三島由紀夫を論じた著書もある。近著に『オレ様国家 中国の常識』『2012年、中国の真実』『中国が世界経済を破綻させる』など。メールマガジン「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」を発行。(撮影:前田せいめい、以下同)

宮崎 最近、甘粛省に行ったんですが、中国の不動産バブルはこのあたりのド田舎にも及んでいます。地方政府とデベロッパーが手を組んでは、農民から農地を取り上げて都市をつくっている。

 一番ひどい例が、内蒙古自治区のオルドスです。50万都市をつくったのに、だれも住まないんですよ。犬2匹ぐらいはいたらしいけど(笑)

 それで近くの公務員やら出入り業者やらを強制的に住まわせて、今やっと2万8000人が住んでいます。50万人住める街だから、ほとんどが空き屋ってことです。

 こういうのが今の中国には370カ所もあるんです。投じたお金はだいたい266兆円。仮に半分で済むとしても130兆円が不良債権化することになります。共産党大会の前に何かが起きるような事態はどうにかして避けるでしょうけど、いずれたいへんなことになるでしょうね。

中国政府が暴動の弾圧を控え始めた理由とは?

 中国では今、2つの大きな変化が起きています。

 まず、地方政府の人事にメスを入れている。中国の地方政府には政治と法律を担当する政法委員というのがいて、彼らは公安局長を兼ねている場合が多いんです。要するに石川五右衛門と長谷川平蔵が同一人物というような状態で、中国の権力構造にあって一番の暗部と言ってもいい。

 これを今、胡錦濤執行部が一生懸命、全国レベルで排除しています。あるいは権力構造の地殻変動に結びつくかもしれません。

 もうひとつは政府が、暴動の暴力的な弾圧を控えるようになったことです。

 中国では労働争議やストライキも入れて、1日に500件暴動が起きています。今までならぶん殴ったり鉄砲を撃ったりして徹底的に弾圧していた。それが去年あたりから風向きが変わってきました。