12月15~16日に開催された米FOMC(連邦公開市場委員会)は、信用不安と景気後退の「負の相互作用」に対して危機感を一段と強め、「政策総動員」を宣言した。(1)FF(フェデラルファンド)レート誘導目標の0%近くまでの大幅引き下げ、(2)超低金利を継続することにコミットする「時間軸」、(3)FRB(米連邦準備委員会)のバランスシート拡大という「量的緩和」を継続する意志表明(含む国債大量購入検討の明確化)、の3点が柱である。今回のFOMCも、全員一致での決定となった(次期財務長官に内定しているガイトナー・ニューヨーク連銀総裁は欠席し、同連銀のカミング氏が代理投票)。

(1)【FFレート誘導目標を「0~0.25%」に引き下げ】~ 市場機能にも配慮/実態を追認
“The Federal Open Market Committee decided today to establish a target range for the federal fundsrate of 0 to 1/4 percent.”
(FOMCは本日、フェデラルファンドレートの誘導レンジを0~0.25%に設定することを決定した)

“In a related action, the Board of Governors unanimously approved a 75-basis-point decrease in the discount rate to 1/2 percent.”
“The Board also established interest rates on required and excess reserve balances of 1/4 percent.”

(この決定に関連し、FRBは全会一致で、公定歩合を0.75%引き下げて0.5%にすることを決定した)
(FRBはまた、準備預金の所要分と超過分に付加する金利を0.25%に設定した)

 FOMCは今回、FFレートの誘導目標を、従来の1.0%というピンポイント水準から、0~0.25%というレンジへと、大幅に引き下げた。スイス国立銀行(SNB)が利下げした時と同様、日本のメディアの中には誘導レンジの下限が0%であることに着目して「ゼロ金利政策」と書いている社が複数あるものの、厳密にはゼロ金利政策とは言えない。

 FRB高官はFOMC終了後にロイターに対し、「FF金利の誘導目標0~0.25%は市場の機能にとり有益」「日本の量的緩和と比較して、FRBの行動は特徴的」とコメントしている。MMF(マネー・マーケット・ファンド)市場からの大量資金流出を避けたい、あるいは日本の量的緩和政策下で短期金融市場の機能が著しく低下した経験を念頭に置いた措置だろう。

 もっとも、FFレートは実効ベース(effective)では、準備預金制度の対象外にあるGSE(政府支援法人)による大量資金流出を主因に0.1%台での推移が続いており(例えば12月15日は0.18%)、今回のFFレート誘導目標の引き下げは、有名無実化していた1%という誘導目標を、実態に合わせただけという見方もできるだろう。その場合でも0%台への利下げを明示することによるアナウンスメント効果はある。

(2)【超低金利継続にコミットする「時間軸」を、漠然とした形で付加】
The Federal Reserve will employ all available tools to promote the resumption of sustainable economic growth and to preserve price stability. In particular, the Committee anticipates that weak economic conditions are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for some time.

(持続的な経済成長の再開を促し、物価安定を確保するため、FRBは使用可能なすべての手段を講じるつもりである。特に、弱い経済状況がFFレートの異例の低水準をしばらくの間保証するものと、FOMCでは見込んでいる)

 上記のように、FOMC声明文は、「しばらくの間(for some time)」という、具体的な条件を明示しない漠然とした形の「時間軸」を、0%台ローレベルの超低金利政策に付加した。