今回は、自治の担い手がいなくなるという話をします。

 私の家族は佐賀から横浜に引っ越してきたのですが、引っ越してから妻が自治会の班長を1年間務めました。この班は全部で十数軒の家があるところでしたが、班長は任期1年で順番に交代する決まりになっていました。

 仕事は、区役所が発行する区報などのお知らせ文書の配布と、赤十字などの募金です。ゴミの収集所をきれいにするゴミ当番は、もっと短期間のローテーションで順番が回ってくるようです。

 自治会活動は低調でした。佐賀市のように住民総出で川を掃除するという行事もなく(人口16万人でしたが、7万人近くが参加する壮大な行事でした)、その点では楽ではあるのですが、高齢化がどんどん進んでも、自治会を中心に地域住民がお互いに助け合うことは不可能だろうなと感じています。

自治会は市役所による行政の大事なパートナー

 これまでの自民党政権も、そして現在の民主党政権も、地方に権限を移すことを重要な政策としています。それ自体はとてもよいことですが、では、肝心の、もっと身近な自治会活動はどうなっているでしょうか。

 実は、佐賀のような地方都市でも非常に弱体化が進んでいるのが現実です。

 佐賀市は東京などに比べてずっと田舎ですので、自治会を中心とした活動が東京よりも活発です。自治会は、「字(あざ)」という数百戸単位で1つのまとまりとなっています。その単位自治会が集って、小学校校区で1つの自治会組織が形成されます。人口でいうとせいぜい2万人までというところです。佐賀市全体では、19の小学校校区自治会が集まって「連合自治会」を構成していました。

 活動の多くは、小学校校区単位で行います。都会でよく行われているような、資源ごみを回収して自治会費用に充てるというような活動もありますが、それだけではありません。例えば、すでに述べたように、年に2回、住民が総出で川の掃除をします。胸まである胴長靴をはいて、男性が何人もはまり込み、雑草や泥を掻き出します。東京のコンクリートで覆われた川と違って、管理しないと泥が溜まり、雑草がはびこるのです。

 また、小学校校区単位にある体育協会が主催して、自治会の運動会が行われます。消防団も健在です。台風が来ると団員には出動命令がかかりますし、堤防の上に土嚢積みもします。認知症のお年寄りが行方不明になった時は、団員が総出で捜索に当たります。一人暮らしの老人の面倒を定期的に見回る活動もしています。

 自治会は、このような活動の中心となっています。市役所が住民に密着した行政を行うために、自治会はとても大事なパートナーでした。

自治会の幹部は70代以上が中心

 ところがこの自治会活動には、2つの問題が出てきていました。1つは、自治会幹部の高齢化です。もう1つは、参加者の減少です。