「老化防止に納豆」を科学する

食卓の定番「納豆」の歩んできた道(後篇)

2012.01.27(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要

 ポリアミンそのものは、300年以上前に発見されていた。ここ数年で注目されるようになった理由の1つは、自治医科大学大宮医療センターの早田邦康准教授をはじめとする研究者が、抗加齢にもつながるというポリアミンの「炎症抑制作用」についての研究成果を出したからだ。

 ポリアミンの炎症抑制作用とは何か。抗加齢を導く可能性とはどのようなものか。それは次のように説明できる。

 心筋梗塞や脳梗塞といった血管病のもとをたどっていくと、古くなったゴムホースのように動脈が弾力性を失って脆(もろ)くなる「動脈硬化」に行き着く。

 これまで動脈硬化のリスク因子としては、老化、悪玉コレステロール(LDL)、さらには高血圧、糖尿病、喫煙などが言われてきた。一方、最近、さらに動脈硬化に加担している“黒幕”的存在が明らかになってきたというのだ。

 その黒幕とは「動脈の炎症」だ。いわば血管がヒリヒリになるようなものである。動脈の炎症は次のように起き、広がっていく。

 まず、酸化した悪玉コレステロールが血管内に増えすぎると、それを抑えようと免疫細胞が出動し、血管内はさながら「酸化悪玉コレステロール」対「免疫細胞」の戦場になる。そこにやって来るのが「サイトカイン」という別の物質だ。厄介なことに、このサイトカインが戦場をさらに刺激する。すると、免疫細胞からは「LFA-1」という重要な因子が出てくる。

 このLFA-1の働きによって、免疫細胞が血管壁に入っていくようになる。その結果、血管内だけでなく血管壁までが戦場となり、新たな戦場で免疫細胞は酸化した悪玉コレステロールを取り込んでは破裂することを繰り返すのだ。

 こうなると、サイトカインなどの刺激を与える物質がさらに分泌され、血管の炎症はさらに拡大する。“小競り合い”は“大戦争”になっていくのだ。炎症が慢性的になると、動脈硬化が進んでいくという。

 炎症から動脈硬化への道を発展させる鍵は、LFA-1にある。LFA-1の働きをうまい具合に抑制すれば、動脈硬化に見られる加齢現象を食い止めることにつながるかもしれない。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


食の万華鏡

食の安全に対して国民の関心が高まっている。今後、安全で美味しい食の供給国としての日本を考えた時にもこの問題は重要になる。食の安全の話題を中心に、食トレンド、食品マーケットなど、食にまつわる様々なテーマを取り上げる。