東京証券取引所が鳴り物入りで導入した次世代高速取引システム「アローヘッド」は、年明けの稼働から1カ月が経過した。売買注文の処理スピードは「目の瞬きより速い」0.002秒と、世界の取引所では最速水準を実現。海外マネーを呼び込み、低迷する株式市場の活性化の切り札として期待がかかる。一方、上海などアジアの取引所が急発展するほか、民間の私設取引システム(PTS)の台頭も著しい。東京ビッグバン(金融制度改革)から10年以上が経ち、日本の株式取引をほぼ独占してきた東証に大競争の波が押し寄せている。
日本航空の再建問題が大詰めを迎えていた2010年1月14日――。東証の株式部や株式売買システム部はほっと胸を撫で下ろしていた。この日、日航株は1銘柄として過去最高の出来高10億株を記録。注文件数は35万に達したものの、アローヘッドが難なくさばいたからだ。
東証関係者が思い起こしていたのは、2006年1月の「ライブドア・ショック」という名の悪夢。ライブドアに対する東京地検特捜部の強制捜査をきっかけに同社株ばかりか、株式相場全体が急落したのだ。
個人投資家から売買注文が殺到し、処理能力の限界を超える恐れが生じたため、東証は全銘柄の取引停止や、立ち会い時間の短縮など異例の措置を余儀なくされた。2005年12月のみずほ証券による誤発注問題に続き、東証のシステムへの信頼は地に落ちた。
300億円投じた「アローヘッド」、アルゴリズム取引に対応
2010年大発会、アローヘッド稼働〔AFPBB News〕
2010年1月4日の大発会から稼働したアローヘッドは、こうした過去のトラブルを教訓に4年越しで開発された。開発費は総額300億円。高速性と安全・拡張性の充実が売り物だ。
旧システムで2~3秒かかっていた注文処理速度は、テスト段階で0.005秒を確認。稼働後は、売買が集中する寄り付きと引け以外のザラ場取引で0.002秒を出している。
ニューヨーク証券取引所(NYSE)の0.005秒、ロンドン証券取引所(LSE)の0.004秒と比べても遜色のない水準であり、東証は「(海外の)取引所はもとより、PTSのスピードとも互角に戦える性能」(斉藤惇社長)と自負している。
海外では、ヘッジファンドなど機関投資家がコンピューターを駆使して超高速売買を繰り返すアルゴリズム取引が主流になりつつある。アローヘッドの導入で同取引が日本株でも可能となり、外国人投資家の資金を呼び込むと期待されている。
1分当たりの注文受付件数は、常に過去のピーク時の2倍の処理能力を確保する設計。1月4日の稼働時点では4倍にまで高めてスタートさせている。
二十数台のサーバーで分散処理する仕組みだから、注文が殺到する特定銘柄に1台を割り当てれば、その他の銘柄の処理への影響を回避できる。サーバー1台で150万件の注文処理能力があり、日航株で35万件の売買があっても問題は生じなかった。
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