「やっぱり株屋は信用されていない」。物議を醸した発言だが、真実をついていた?

 「やっぱり株屋は信用されていない」――。2009年3月、株価対策を検討する有識者会合で当時の麻生太郎首相が発した言葉が物議を醸した。既に、内閣支持率は大きく低下し、麻生バッシングの材料探しに躍起になっていたマスコミは「証券会社で働く人々への差別発言だ」と一斉に批判。ツイッターやブログ上では激しい論争が巻き起こった。

 しかし、内心では麻生発言に同調した証券関係者や投資家は少なくなかっただろう。そして、あれから1年半が経った今も、やっぱり麻生言葉は真実をついていた──と思わざるを得ないような不祥事が証券界で相次いでいる。

投信の回転売買で行政処分

 2009年12月、大阪本社の中堅証券会社・コスモ証券で投資信託の販売手数料を稼ぐため、別の投信への乗り換えを迫る「回転売買」を行っていたことが発覚。金融庁は金融商品取引法に違反したとして、業務改善命令を発動した。顧客の利益よりも、自社の収益確保を優先するよう役員が社員に指示。被害者の多くが高齢者や女性だった。

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 2010年6月には、同じく中堅証券の高木証券が、不動産ファンドを販売した際に、損失が出るリスクを十分に顧客に説明せず、内部管理体制にも問題があったとして、金融庁・近畿財務局から2週間の業務停止命令を受けた。この問題では、当時の社長が引責辞任に追い込まれた。

 この不動産ファンドは、銀行からの融資と投資家の資金で購入したマンションの賃料収入を分配する仕組みだったが、金融危機後のマンション価格下落で投資家は大幅な損失を被った。2008年5月以降満期になった同ファンド13本・元本合計154億円のうち、償還額はわずか43億円だった。

 顧客からの売買注文の執行や資産預かりなどの手数料は、証券会社の収入の柱であり、当然のことながら、株式や投信の売買が増えるほど儲かる仕組みだ。証券業界は、過去に何度も、顧客の利益を無視した手数料の荒稼ぎで、信用を失い、顧客離れを招く事態を繰り返してきた。それでも、近年は、顧客に対する説明義務など投資家保護を鮮明にした金融商品取引法も整備され、証券各社もコンプライアンス(法令順守)体制を構築するなど、地道な努力を続けてきたはずだった。