日本人の睡眠時間は年々減少してきている。NHK国民生活時間調査(2005年)によると、1960年は約8時間13分ほどあったものが、2005年には7時間22分まで減少した。しかしこれでほぼ下げ止まっており、そのことから考えると、日本人の睡眠時間の短縮はほぼ限界にきていると考えられる。今回と次回は、健康に欠かせない睡眠について考えることにしよう。
レム睡眠とノンレム睡眠
まず睡眠の種類とメカニズムについて知っておこう。睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠がある。
レム睡眠とは、体が眠っているのに脳が活動している状態。骨格筋が弛緩状態にあり体は動かないが、脳波は覚醒時と同様の振幅を示す。特徴としては、急速眼球運動が見られる(目がキョロキョロ動く)。夢を見るのは、このレム睡眠中が多く、この時間帯に覚醒すると夢の内容を覚えている率が高い。
一方、ノンレム睡眠は、体も脳も休んでいる状態。脳の温度は下がり、体は弛緩して心拍のテンポも遅くなる。眼球はほとんど動かない。
眠りにつくと、まずノンレム睡眠が現れ、約2時間後にレム睡眠に移る。以後、ノンレム睡眠とレム睡眠が交互に現れ、約90分周期で繰り返される。
この2種類の睡眠の役割は、何か? 実は、生後6カ月まではほとんどレム睡眠が占めていて、その後、脳が覚醒して活動を始めるようになると、ノンレム睡眠が増えてくる。つまり、ノンレム睡眠は休息のための睡眠で、レム睡眠は脳のネットワークを創るための睡眠だと考えられている。
大人になってもレム睡眠があるのは、記憶と関わっていると考えられている。不要な記憶を捨て去り、必要な記憶を定着させることで、翌日からの活動をスムーズに行うための記憶の取捨選択を行うのである。一晩寝ると記憶が定着するというのは、本当なのだ。
理想の睡眠時間は?
人はどのくらい睡眠を取ればよいのだろうか?
デメンツという睡眠学者は、8時間15分が理想の睡眠時間だと説いた。これは、「昼間に眠気を生じないだけの睡眠時間はどのくらいか」という基準に沿っての実験結果だが、最近では7時間が理想だという説が有力だ。
これには、理由がある。つまり、1時間15分不足することで、寝つきがよくなり、逆に熟睡感が生まれ、朝、すっきりと目覚めるというのだ。
ただし、最適な睡眠時間は、人それぞれ異なる。9時間以上寝る人を「ロングスリーパー」、6時間未満の人を「ショートスリーパー」と呼ぶ。