日本人の睡眠時間は年々減少してきている。NHK国民生活時間調査(2005年)によると、1960年は約8時間13分ほどあったものが、2005年には7時間22分まで減少した。しかしこれでほぼ下げ止まっており、そのことから考えると、日本人の睡眠時間の短縮はほぼ限界にきていると考えられる。今回と次回は、健康に欠かせない睡眠について考えることにしよう。

レム睡眠とノンレム睡眠

 まず睡眠の種類とメカニズムについて知っておこう。睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠がある。

たった3晩の睡眠不足で糖尿病になる危険性増加、米研究報告

2007年英ロンドンで開かれた睡眠を健康、社会、文化的にとらえた展覧会での作品。3晩続けて寝ないと糖尿病になる危険性が高くなるという研究も発表されている〔AFPBB News

 レム睡眠とは、体が眠っているのに脳が活動している状態。骨格筋が弛緩状態にあり体は動かないが、脳波は覚醒時と同様の振幅を示す。特徴としては、急速眼球運動が見られる(目がキョロキョロ動く)。夢を見るのは、このレム睡眠中が多く、この時間帯に覚醒すると夢の内容を覚えている率が高い。

 一方、ノンレム睡眠は、体も脳も休んでいる状態。脳の温度は下がり、体は弛緩して心拍のテンポも遅くなる。眼球はほとんど動かない。

 眠りにつくと、まずノンレム睡眠が現れ、約2時間後にレム睡眠に移る。以後、ノンレム睡眠とレム睡眠が交互に現れ、約90分周期で繰り返される。

 この2種類の睡眠の役割は、何か? 実は、生後6カ月まではほとんどレム睡眠が占めていて、その後、脳が覚醒して活動を始めるようになると、ノンレム睡眠が増えてくる。つまり、ノンレム睡眠は休息のための睡眠で、レム睡眠は脳のネットワークを創るための睡眠だと考えられている。

 大人になってもレム睡眠があるのは、記憶と関わっていると考えられている。不要な記憶を捨て去り、必要な記憶を定着させることで、翌日からの活動をスムーズに行うための記憶の取捨選択を行うのである。一晩寝ると記憶が定着するというのは、本当なのだ。

理想の睡眠時間は?

 人はどのくらい睡眠を取ればよいのだろうか?

 デメンツという睡眠学者は、8時間15分が理想の睡眠時間だと説いた。これは、「昼間に眠気を生じないだけの睡眠時間はどのくらいか」という基準に沿っての実験結果だが、最近では7時間が理想だという説が有力だ。

 これには、理由がある。つまり、1時間15分不足することで、寝つきがよくなり、逆に熟睡感が生まれ、朝、すっきりと目覚めるというのだ。

 ただし、最適な睡眠時間は、人それぞれ異なる。9時間以上寝る人を「ロングスリーパー」、6時間未満の人を「ショートスリーパー」と呼ぶ。