医療最前線

お年寄りは平穏に死にたがっている末期医療を考える~(1)

2010.03.17(水)  長野 修

『口から食べられなくなったらどうしますか 「平穏死」のすすめ』という本が今年の2月に出版された。著者は、40年以上外科医として活躍してきた石飛幸三医師。2003年刊行の『患者が決めた! いい病院ランキング』(オリコン・メディカル刊)では外科部門の1位になるなど、患者からも高い評価を得てきた医師だ。

 同氏は現在、東京都世田谷区にある特別養護老人ホーム「芦花ホーム」の常勤医を務める。入居者の平均年齢は90歳で、9割が老人性認知症を患っている。長寿社会のまさに縮図である。

 外科医時代は多くの患者を手術によって死から生へと引き戻すことが医師としての勝負であったが、今は人生の終末をいかに安らかに迎えるかという点に重点を置く活動に従事している。いわば、真逆の立場である。

 そんな石飛医師が上梓した『「平穏死」のすすめ』には、高齢化社会を迎えた我々が考えるべき医療のあり方への示唆が満ちている。

死の迎え方へのヒント

石飛幸三(いしとび・こうぞう)
1935年11月2日生まれ。1961年、慶應義塾大学医学部卒業。1970年、ドイツのフェルディナント・ザウアーブルック記念病院で血管外科医として約2年勤務。1972年より東京都済生会中央病院勤務。1993年、同病院副院長。2005年より芦花ホームに勤務

 今回、この本を出版した動機について、石飛医師はこう語る。

 「医療の進歩によって寿命はどんどん伸び、高齢化が進んでいます。寿命が伸びたことは素晴らしいことですが、その伸びた時間の質を老人ホームという場所で見た時に、私の中には『本当にこれで良いのだろうか』という疑問が涌いてきました」

 「そもそも、医者は患者を生き延びさせることに最大の力を注いできましたが、その後のことはほとんど考えてこなかったのです」

 「超高齢化社会を迎えつつある今、本当のあるべき医療について、また死の迎え方について考えるヒントになればと思い、この本を書きました」

 芦花ホームは、閑静な環境の中にある洒落た近代的な建物だ。様々な角度からの彩光が工夫されている。平成15(2003)年には天皇皇后両陛下のご訪問もあった。

 入所者の負担は1カ月に5万円から15万円未満で、通常1カ月の入所費が30万円前後と言われている有料老人ホームに比べると格段に安いため、待機者が常に数百人レベルで、現在も増え続けている。

 理想的なホームなのだが、命を少しでも永らえることに…
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