日本復興構想会議の提言が6月25日に菅直人首相に提出されました。「単なる復旧ではなく、未来に向けた創造的復興を目指していくことが重要である」という趣旨で始められた会議です。

 復興会議の提言の内容は新聞でご覧になっている方が多いと思いますが、 内容が抽象的だとか、菅政権では実行する力がないとかいろいろな批判が出ています。

 その点は私も大いにうなずけるところですが、この手の政府の会議は、発足した時の委員の顔ぶれを見れば、政府がどのような内容でまとめるつもりなのかということが大体分かってしまいます。

 そのことは高橋洋一さんの本などに詳しく書いてありますが、霞が関が考えている方向でまとめていくために、主要なメンバーには霞が関と考えの近い人や、最終的にはコントロールが利く人を起用するのです。

 政府の主要な目的は、この震災対策をきっかけとして増税に何とか持ち込みたいというところでしょうから、その点では財務省の考え通りになった提言ではないでしょうか。

 前文には結構良いことが書いてありまして、例えば「実はどの切り口をとって見ても、被災地への具体的処方箋の背景には、日本が『戦後』ずっと未解決のまま抱え込んできた問題が透けて見える」というのは、全くその通りです。

 自治体が土地利用計画を立てる際も、関係省庁の縦割りに従って、都市計画、農地計画、森林計画などを全く別個に定めるのです。本来、被災地の復興計画はこれらを一体として定めるべきです。しかし、関係省庁の縦割りの壁は強力です。強力な政治家のリーダーシップがなければ解決は望めません。ということは、残念ですが、当面、解決はしないでしょう。

具体策が提示されていない「広域的な国土政策」

 さて、この提言には、東京一極集中を改めようという議論がほとんど盛り込まれていませんでした。私にはとても残念に思えてなりません。

 短期的には、首都圏の自治体とそれ以外の自治体の利害が相反するものですが、地震のリスク分散を考えると、首都機能の分散はとても重要なテーマです。