第1部での日本の原発の警備態勢の検証を受け、その脅威となる特殊部隊攻撃の一例として、北朝鮮特殊部隊を取り上げ、その能力、攻撃要領を検討する。次いで、日本との比較対象として、米国での近年の警備態勢強化の動きを見ることとする。

1.北朝鮮特殊部隊の能力と攻撃要領

韓国軍、北朝鮮による原発爆破を想定した演習を実施

韓国は今年4月、北朝鮮の工作員による原発爆破を想定した訓練を実施した。写真は古里原発〔AFPBB News

(1)北朝鮮特殊部隊の能力、編成装備

 北朝鮮の特殊部隊は、韓国の2008年の国防白書によれば、総兵力は18万人に増加している。党のものと軍のものがあり、軍には偵察局、軽歩兵訓練指導局、陸軍各軍団、海軍に属する特殊部隊がそれぞれに存在する。

 指揮系統は比較的単純で、党の特殊部隊は国防委員会が、軍については人民武力省内の参謀本部が直接統制する。

 任務については、日本のような朝鮮半島外の外国に対する、戦略目的の上陸後の原発に対する襲撃行動は通常、海軍特殊部隊の支援のもとに、偵察局の狙撃旅団が担当すると見られる。

 その任務は、戦略偵察、全世界にわたるミサイル、レーダ、核・生物・化学兵器などの占領・撃破、要人の暗殺・誘拐などの撹乱工作、北朝鮮側の核・生物・化学兵器の攻撃目標の偵察、生物剤の隠密散布などと並び、航空基地、貯油施設、トンネル、橋、発電所などの重要な戦略目標の阻止、占領または支配による各特殊部隊への協力が挙げられている。

 ここで重要なことは、発電所そのものは特殊部隊の目標としては次等であり、ほかのより重要な目標の達成に協力することが任務とされている点である。

 偵察局狙撃旅団の編成は、旅団は7~10個の大隊から成り、大隊が運用単位となっている。大隊には80人程度の狙撃中隊が5個と通信小隊があり、総員数は450人。各中隊には25人単位の狙撃小隊が3個あり、総員数は80人である。各小隊は3人から4人の狙撃分隊6個程度から成る。

 各旅団には、高空降下低空開傘、戦闘潜水などの能力を有する隊員がいる。武器としては60ミリ迫撃砲、対戦車ミサイル、小銃、軽機関銃、重機関銃、手榴弾、爆薬、82ミリ無反動砲、107ミリ無反動砲、対戦車ロケット弾などを保有している。

 一部の要員は、通信機、電子情報器材、暗号装置なども保有する。なお撹乱部隊は、米軍や自衛隊などの制服を着用しその武器を所持していることもあり得る。

 重武装ではないが、武器操作、射撃や徒手格闘の訓練は徹底的に行われており、兵器の駆使能力は高い。鹵獲(ろかく)した兵器や車両の操縦もできるとされている。

 原子力発電所を襲撃するとした場合、最低1個中隊程度の兵力は指向するとみられる。その場合、小隊ごとに目標が与えられ、連携して行動するであろう。