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 BtoCはもちろん、BtoBにおいてもEC(電子商取引)が当たり前となり、流通や小売を介さない「DtoC(Direct to Consumer)」メーカーの台頭も著しい現在。もはや「EC化」なくして将来を展望することはできない。一方で、会社の仕組みや商習慣、企業文化といった要因により、EC化できていない企業もいまだに多数存在する。本連載では、元アマゾンジャパン創業メンバーの林部健二氏が現実的な視点からEC構築のポイントを説いた『10年後に勝ち残るEC戦略』(林部健二著/プチ・レトル発行)から、内容の一部を抜粋・再編集。

 今回は、スマホの普及がEC市場をどう変えたかを、メルカリを例に解説する。

本稿は「Japan Innovation Review」が過去に掲載した人気記事の再配信です。(初出:2024年8月14日)※内容は掲載当時のもの

■ パソコンからスマホへ、検索エンジンからアプリへ

 1つは、パソコンからスマートフォンへとデバイスが変化したことです。

 アマゾンが誕生したころは、パソコンがインターネットを利用する主な手段でした。しかし、2007年にアメリカでiPhoneが誕生してから、スマホの所有率はもの凄い勢いで上がっていきました。

 総務省情報通信政策研究所のデータによれば、10代~60代の全世代におけるスマートフォン利用率は、2013年には52.8%だったのが、2022年には97.1%に上っています。

 このような急激なスマホの普及に伴い、スマホに特化したサービスを作る会社が出てきました。代表的なのは、フリマアプリの「メルカリ」です。

 オークションサイトは1995年にアメリカで「eBay」が、1999年に日本国内で「Yahoo! オークション」が開始しており、数年で一気に普及しました。手数料が収益の中心である点は、メルカリもこれらのオークションサイトも同様です。

 しかし、メルカリが他と違ったのは「売買がスマホだけで完結し、利用のハードルが低い」ということでした。従来のオークションサイトは「パソコンでの利用」が前提となっていましたが、メルカリはサービス当初から「スマホで楽にできる」ことを強くアピールしていたのです。

 スマホで商品の写真を撮り、アプリ上で商品説明を簡単に入力するだけで、数分もあれば商品を販売することができます。女性や若年層などスマホしか持っていない(パソコンを持っていない)層もターゲットに取り込むことに成功しました。