写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ

 危機や不祥事への対応力の差は「組織文化」に起因している。多様性が重視される時代に、組織文化をどのように築き、生かしていけばよいのか。「CQ(文化的知性)」を切り口に、国内外の企業や自治体で組織の課題を解決してきた著者が記した『強い組織は違いを楽しむ』(宮森千嘉子著/日本能率協会マネジメントセンター)から内容の一部を抜粋・再編集。

 丸井グループ3代目社長の青井浩氏が、上意下達の組織文化を自律型に変えるために取り組んだこととは?

組織文化で二項対立を乗り越える

強い組織は違いを楽しむ』(日本能率協会マネジメントセンター

株式会社丸井グループ
代表取締役社長 代表執行役員(CEO)
青井 浩 氏
1961年生まれ。86年、丸井グループ入社。91年取締役就任、その後副社長を経て、2005年より現職。

■組織文化をアップデートさせる

――社長に就任された2005年から早々に組織文化の変革「企業文化1.0」に取り組んでいらっしゃいます。

青井 やらされ感をなくすことがコンセプトでした。上意下達の文化ではなく、一人ひとりが自主性を発揮できるようにしようと。ただコンセプトや認識が整っていけば、「3年くらいで一気呵成に文化が変わるんじゃないか」と思っていたのですが、やっぱり時間がかかりましたね。

――ましてや上意下達が強い組織文化を持っていたのですし。

青井 そうなんですよ。それをフラットにして自主性を高めるというのは、天と地をひっくり返すみたいなもの。まったく逆のことをやろうとしているわけですから、やっぱり抵抗や反発、戸惑いはありました。特にベテランの方は「え? そんなことできるわけないじゃないか」って。

――「何を言っているんだ?」と受け止められていたのかもしれませんね。

青井 しかも、自主性を持った組織を作ろうとしていましたので、トップダウンだけで推し進めるのは矛盾します。ですから相当、苦労しました。

 そこで進めたのが「手挙げの文化」です。グループ横断の全社プロジェクトへの参加や中期経営推進会議、昇進・昇格、研修や部署異動などは社員の手挙げによって行っています。やりたい人がやりたいことに参加できる仕組みにしました。