写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ

 危機や不祥事への対応力の差は「組織文化」に起因している。多様性が重視される時代に、組織文化をどのように築き、活かしていけばよいのか。「CQ(文化的知性)」を切り口に、国内外の企業や自治体で組織の課題を解決してきた著者が記した『強い組織は違いを楽しむ』(宮森千嘉子著/日本能率協会マネジメントセンター)から内容の一部を抜粋・再編集。

 半導体素材を手掛けるレゾナックの髙橋秀仁CEOと今井のりCHRO(最高人事責任者)が、業績会議よりも社員と対話する時間を優先する真意は何か?

組織文化の変革に取り組む覚悟と信念

強い組織は違いを楽しむ』(日本能率協会マネジメントセンター

株式会社レゾナック
代表取締役社長 CEO
髙橋 秀仁 氏
1962年生まれ。86年、三菱銀行(当時)入行。日本ゼネラルエレクトリック(GE)ほか外資系数社を経て、2015年に昭和電工(当時)入社。23年より現職。

取締役 常務執行役員 最高人事責任者(CHRO)
今井 のり 氏
1972年生まれ。95年、日立化成(当時)入社。経営企画や米国での営業や複数事業に携わり、2019年に執行役に就く。22年にCHROに就任し、24年より現職。

■ 個人のパーパスと組織のパーパス

――御社は「自分のパーパスを実現するための乗り物がレゾナック」と言っていますよね。自分と会社のパーパスが100%一致しないといけないと思っている方もいますが、そんなことはありえませんよね。

髙橋 パーパス探究カフェの最後には、自分のパーパスと会社のパーパスを、2つの円で描いてもらいます。これが面白い。まるまる重ねて描く人はほぼいない。一部が重なっていたり、片方が片方にまるっと含まれていたり。まったく重なっていない人もいて。「全く接点がないんだね」と言ったら――。

今井 「今、歩み寄っているんです」とかって。

――それぞれにポテンシャルがありますよね。多様性があって、違いを尊重して何かを生み出していくという。そのためにお2人が心理的安全性を作っていると思いますし、知的誠実性もあると感じます。

髙橋 僕は「従業員に嘘をつかない」ことがモットーです。厳しいことも正直に言う。例えば役員に対して厳しいことは言いにくいものですが、僕は結構、指導していますよ。

今井 日本企業ではあまりやらないレベルですよね。逆に髙橋に対しても、フィードバックはありますし。髙橋が社長に就く前には役員一同で泊まり込んで、髙橋に対して思うことを率直に伝える会をやりました。髙橋にダメ出しをする場をあえてつくって。