ベトナム・ホーチミン市の屋台で食事をする地元の会社員たちrazmanrusli / Shutterstock.com
危機や不祥事への対応力の差は「組織文化」に起因している。多様性が重視される時代に、組織文化をどのように築き、活かしていけばよいのか。「CQ(文化的知性)」を切り口に、国内外の企業や自治体で組織の課題を解決してきた著者が記した『強い組織は違いを楽しむ』(宮森千嘉子著/日本能率協会マネジメントセンター)から内容の一部を抜粋・再編集。
情報システムなどを手掛ける三谷産業は、日本のやり方を押し付けるのではなく、現地の価値観と融合させることにいかに成功したのか。日本の企業文化を海外に根付かせる方法を探る。
海外に浸透させた日本企業の組織文化
『強い組織は違いを楽しむ』(日本能率協会マネジメントセンター)
三谷産業株式会社
取締役海外事業担当 ベトナム事業企画促進室長
三浦 秀平 氏
1977年生まれ。2006年、ACSD入社。13年に三谷産業社長室長、14年にはAXIS設立に携わり取締役社長に。その後ACSD取締役社長などに就き、22年より現職。
■ その国の社員が事業を牽引できるように
――三浦さんが働き出した当初の、御社の状況はいかがでしたか。
三浦 私は、前職で2004年からベトナムに駐在しておりました。そこから縁あって06年にAureoleグループのAureole Construction Software Development Inc. (ACSD)に入社しました。他社が他の国にも展開する中、本社の三谷産業は「ベトナムのみに注力する」という明確な意思を示し、実行していたことが印象的でした。
ただ当時は多くの他社と同様、日本人によるマネジメントが主軸でしたね。まだベトナム人と日本人との相互の信頼は弱かった。かつ、当時は会社の経営方針や計画、数字についてもベトナム人の社員にはおそらく伝わっていなかったですね。赤字か黒字かも社員は意識していなかったように思います。
■ 相手に合わせて調整し変えていく
――そこからさまざまな取り組みを行ったと思いますが、印象的だったことについて聞かせてもらえますか。
三浦 苦労話には切りがないのですが、一つはAureole Expert Integrators Inc. (AXIS)の立ち上げに関連して。AXISは2014年に設立した会社です。14年はAureoleグループの創業20年という節目に当たり、その前年に私がレポートを書いたんですよ。「グループの内部統制、人事労務などを担う会社を立ち上げましょう」と。グループの他6社はいわゆる事業系の会社で、P/L重視で営業利益には関心があっても、人材投資にはほぼ関心がなかった。






