写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ

 危機や不祥事への対応力の差は「組織文化」に起因している。多様性が重視される時代に、組織文化をどのように築き、活かしていけばよいのか。「CQ(文化的知性)」を切り口に、国内外の企業や自治体で組織の課題を解決してきた著者が記した『強い組織は違いを楽しむ』(宮森千嘉子著/日本能率協会マネジメントセンター)から内容の一部を抜粋・再編集。

 東レ経営研究所の元社長がタイで学んだ、環境変化に強い組織文化とは?
(肩書、事実関係等は本書刊行時のままとしています)

経営幹部がCQを高める意義

強い組織は違いを楽しむ』(日本能率協会マネジメントセンター

株式会社東レ経営研究所
代表取締役社長
髙林 和明 氏
1957年生まれ。1980年、東レ入社。営業、マーケティング分野に従事し、2017年よりタイ東レグループ9社の代表を務める。20年より現職。

■ 日本からタイに駐在したときの驚き

――髙林さんと初めてお会いしたのは2019年でしたね。バンコクでの私の講演にいらしていただいて。ホフステードの6次元モデルに関心を持っていただきました。

髙林 私は2017年からタイに駐在し、在タイ国東レ代表として、現地にあった9つのグループ会社を統括していました。20カ国ほどの出張経験はありましたが、海外に住んだのはタイが初めて。3年半だけでしたが、この間に知った「タイ人と日本人の違い」は多かった。住んだことで「日本とは全然違う」と実感しました。

――どんな違いがあったのですか。

髙林 例えば下から上へ「悪い情報」が報告されてこない。工場で従業員がケガをしても、その管理者は「知らない」と言いますよ。後にCQを知って理解が深まりましたが、タイは権力格差の高い国民文化なんですよね。日本人幹部が「絶対に怒らないし、評価を下げることもないから、正直に言ってほしい」と言って、初めて話してくれます。

――そこで当時の髙林さんは、タイの事業でどんなことに取り組んでいたのでしょうか。

髙林 タイは東レの中でもっとも古い海外生産拠点で、もう半世紀以上になります。その中で、ひとつはコンプライアンスの強化ですね。