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2025年初頭、世界中で話題となった生成AI「ディープシーク(DeepSeek)」。チャットGPTと遜色ない性能で、しかも無料で使えるとあって、わずか1カ月で1億ダウンロードを達成した。しかし、この中国発AIの真の革新性は、ユーザー自身がデータを管理できる「分散型AI」の概念を取り入れていることにある。そう遠くない未来に、「誰もが自分のAIを持ち、使いこなす時代」がやって来るかもしれない――そのとき、私たちはAIとどう向き合うべきなのか。ソフトバンクやアクセンチュアでAI エンジニアとして活躍してきた著者が、ディープシークの可能性と課題、そして生成AIの未来について記した『DeepSeek革命 オープンソースAIが世界を変える』(長野陸著/池田書店)から内容の一部を抜粋・再編集。
今回は、ディープシークを使う上で最大の懸念である、政治的リスクとデータセキュリティについて考察する。
中国製AIは本当に危険なのか?
『DeepSeek革命』(池田書店)
ここまで、ディープシークの技術的な利点を述べてきました。ここまで見ると、ディープシークが技術的にはより安全な方面に進化していることがわかるでしょう。
一方で、ディープシークに対しては「データセキュリティ」や「プライバシーの安全性」に対する懸念や、「規約への不安」や「政治的リスク」に対して慎重な意見もあります。
規約には中国の法律が適用される旨が書かれており、データについても、中国に管理される恐れがあります。
これは、中国自体がAIに限らず、国民のデータを収集したり監視したりする方針を取っているからです。この方針は中国独特のもので、中国の企業のつくった規約に則ってディープシークがつくられています。
よって、データの保護を重視するEUやアメリカなどでは、ディープシークの使用を禁止する動きなども見られます。
ただし、データセキュリティの管理などが特に問題となるのは、ブラウザ版やアプリ版を使用した場合の話です。
ローカル版をオフラインで使用する場合は、通信が発生しないためデータが中国に管理されることは考えにくいと言えるでしょう(OSSバイナリのサプライチェーン問題(悪性改変)という懸念点はあります)。






