出所:共同通信イメージズ出所:共同通信イメージズ

 世界中の富裕層が訪れる国際的観光地へと変貌を遂げたスキーリゾート、北海道・ニセコ地域。街の看板の多くは英語で表記され、地元スーパーには高級志向の品が並ぶ。そんなニセコと同様の現象「ニセコ化」が他の地域の飲食店やテーマパークでも見られると語るのが、都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家の谷頭和希氏だ。ニセコ化とはどのような現象を指し、なぜ全国に広がりを見せているのか。2025年1月に書籍『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)を出版した谷頭氏に、各地で広がるニセコ化の動向について話を聞いた。

ありふれたスキーリゾートを変えた「選択と集中」の戦略

──著書『ニセコ化するニッポン』では、「選択と集中」によって特定の場所が「テーマパーク」のようになる現象を「ニセコ化」という言葉で表現しています。ここでいう選択と集中とは、どのようなことを指すのでしょうか。

谷頭和希氏(以下敬称略) 選択と集中とは、特定の客層に向けて経営資源を集中させる戦略です。「選択」とは、高額な価格設定などによって、その場所にやって来る人を選ぶことを意味します。そして、その場所を訪れた人が満足するように、彼らに深く刺さるサービスを「集中」的に行うのです。

 ニセコ化という言葉の元になった北海道・ニセコが分かりやすい事例です。ニセコはもともと、ありふれたスキーリゾートでした。1980年代のスキーブームでは多くの日本人観光客が訪れましたが、スキーブームが終息したことで客数は減少し、多くの施設が撤退してしまいます。

 そこに目を付けたのが海外資本のホテルです。「ニセコのパウダースノーは、世界にアピールできるポテンシャルがある」と考え、2000年代から外国人富裕層向けのスキーリゾートとして開発が進められました。そして、この流れに日本政府の観光政策やインバウンド推進の動きが重なりました。

 その結果として生まれたのが「日本であって日本ではない」スキーリゾートです。街中の看板も英語が主流で、地元のコンビニ「セイコーマート」には高級シャンパンが並び、外国人富裕層をターゲットとした観光地と化しています。

 ニセコ化の流れはコロナ禍以降で顕著になっており、日本全国のさまざまな場所で同様の現象が起きているのです。