kenma代表 ビジネスデザイナーの今井裕平氏(撮影:酒井俊春)

 物価は上がっているのに、価格を上げられない。そんな“ジレンマ”に、多くの企業が直面している。商品やサービスの独自性と価値を高め、それらを「価値に見合った価格」で売るにはどうすればいいのか。『すごいアイデア 「尖らせて売る」ビジネス発想の公式』(祥伝社)の著者で、ビジネスデザイナーとして数々のヒット商品を生み出してきたkenma代表の今井裕平氏に秘訣を聞いた。

なぜ「つまらないアイデア」を選んでしまうのか?

――著書『すごいアイデア 「尖らせて売る」ビジネス発想の公式』では、アイデアづくりの方法を公式化し、ビジネスの中核を担う商品やサービスに磨き上げていくノウハウを具体的に解説しています。執筆の狙いは何でしょうか。

今井裕平氏(以下、敬称略) 以前、ある企業のCEOの方が「公式を使えば誰でも円の面積を導き出せるように、ビジネスにおいても“公式”でショートカットできるところはした方がいい」とおっしゃっているのを見たことがあるのですが、本書の狙いもまさにそこにあります。

 私自身、過去にアイデアづくりにかなり苦しんだ時期があるので、発想の方法をシンプルかつ再現性の高い公式に落とし込み、誰もが実践できるものとして提示したかったのです。

――著書ではその「公式」を「『基準』と『手順』を併せたもの」と定義しています。

今井 アイデアづくりにおいては、アイデアの良しあしを判断する「基準」と、基準を満たすアイデアを手に入れるための「手順」が必要です。ダーツに例えるなら、「基準」が的で、「手順」が矢を投げるフォームにあたります。

 どちらも同じように重要ですが、さまざまな企業の商品開発プロジェクトやレビューに関わっていて感じるのは、肝心の「的=基準」がなかったり、曖昧だったりするケースが多いということです。