
製造業を中心とした日本企業が利益率で米欧企業に劣後している要因の一つは「経営の仕組み」にあるのではないか──。こうした課題意識から、経済産業省では2023年12月に「グローバル競争力強化に向けたCX研究会」を立ち上げた。CXとは「コーポレート・トランスフォーメーション(企業変革)」を意味し、本研究会では、グローバル展開を進める日本企業が目指す姿を約6カ月にわたり議論したという。その内容は「CX研究会報告書(CXレポート)」にまとめられている。日本企業に求められるCXとは何か、取り組みの内容に迫った。
グローバル経営を行う日本企業の課題には「類似性があった」
CX研究会では、製造業を中心としてグローバル経営を実行するための組織の在り方について議論を重ねたという。経営戦略の専門家や企業変革を実務として担うCxO(Chief x Officer:企業の特定の分野や機能を統括する最高責任者)が参加し、意見を交換していった。
この研究会が生まれた発端は「日本の製造業の利益率の低さ」だった。発足から携わった経済産業省の片山弘士氏は、「日本の製造業は急速なグローバル化を進めて過去最高益を更新し、一定のシェアも確保していますが、利益率は米欧企業に比べて数%低い状況です」と話す。そしてその要因は、ものづくりやサービスそのものの競争力ではなく「経営の仕組み」にあるのではないかと考えたという。「企業はグローバル展開を進めてきた一方で、日本を中心とした経営の仕組みは変えられていない。旧来の日本的経営をアップグレードすることが求められているのでは」と指摘する。

そこで、以前から同様の課題を自身の著書などで指摘していた、一般社団法人日本CFO協会/日本CHRO協会シニアエグゼクティブの日置圭介氏に協力を依頼し、グローバルにビジネスを展開する多数の国内企業や米・欧企業へのヒアリングを通して、各社の経営実態や課題感を調査していった。すると、それぞれが直面している“壁”に一定の共通点や類似性が見られたという。日置氏が説明する。