パナソニック ホールディングス 代表取締役 副社長執行役員、グループCIO、グループCTROの玉置 肇氏(撮影:榊水麗)

 2021年からDXプロジェクトとして「PX(パナソニックトランスフォーメーション)」を進めてきたパナソニックグループ。5年目となる2025年度からは、この取り組みを全社的な経営変革に広げていくという。PXをけん引してきたパナソニックホールディングス 代表取締役 副社長 グループCIO、グループCTROの玉置肇氏と、経済産業省の「グローバル競争力強化に向けたCX研究会(※)」の発起人である経済産業省の片山弘士氏が、その道のりを振り返った。

※CX=コーポレートトランスフォーメーション:企業変革

PXの加速へとつながった「決意表明」

――2021年度からスタートしたPXでは、データ利活用の促進や、システムを起点とした業務プロセスの進化などに注力してきました。その成果として、パナソニックのくらし事業では、市場の実需データと生産計画を連動させることで、流通在庫を22%削減しながら製品の即納率99%を維持できているとのこと。電材事業でも、DXにより付加価値生産性を上げたことを明らかにしています。 玉置さんは、これまでのPXを振り返り、率直にどう感じていますか。

玉置肇氏(以下敬称略) あくまでPXは道半ばであり、まだまだ成功したとはいえません。われわれが進める変革において、より一層力を入れていくものだと思っています。

 ただし、ここまでの道のりにおいて、良い意味で分岐点になったポイントはあります。プロジェクト開始から2年後の2023年に発表した「PX:7つの原則」です。

 全社的なDXを進める上では、経営陣の覚悟が何よりも重要です。7つの原則は、2023年3月の役員合宿で、パナソニックホールディングス(以下、パナソニックHD)の執行役員と、グループの主要事業会社の社長が集まり、議論の末に作ったものでした。経営陣の決意表明であり、参加者全員が同意を示すサインをしています。

 PXは、スタート当初から順風満帆に進んだわけではありません。開始2年の時点では、現場から「あまり効果を感じられない」「(PXで力を入れている)業務プロセスの標準化が進んでいない」という声もありました。そこで、社長の楠見雄規や私がグループ各社に行き、ヒアリングなどを重ねました。それらを経て行った打開策が、PXに対するコミットメント、いわば公約を明文化し、役員全員でサインすることだったのです。