撮影:榊水麗
村田製作所の成長を生んだ戦略の1つに「にじみ出し」がある。自社事業の関連領域に徐々に事業を広げる手法のことだ。同社 代表取締役副社長の南出雅範氏(2025年5月取材時は代表取締役 専務執行役員 コーポレート本部本部長)は、にじみ出しが可能な理由の1つとしてファイナンスや人事といった「コーポレート機能」の在り方がある、と語る。村田製作所はコーポレート部門の体制をどのように構築しているのか。南出氏と、経済産業省による「グローバル競争力強化に向けたCX研究会(※)」の座長を務めた日置圭介氏が語り合った。
CX=コーポレートトランスフォーメーション:企業変革
セラミックスに見る「村田ならではの領域展開」
――経産省のCX研究会では、日本のグローバル製造業のコーポレート機能に関して議論が重ねられました。コーポレート機能の在り方次第で「コスト増」や「利益低下」が起き、グローバル競争力低下を招く要因になると考えたためです。南出さんはコーポレート本部長を務めていますが、村田製作所ではどのような体制なのでしょうか。
南出雅範氏(以下敬称略) 当社のコーポレート機能の特徴は、グループの全事業部門を横串で見ていることです。これは当社のような企業規模では珍しいかもしれません。技術開発や営業、生産技術についても、全事業を横断して管理しています。
この体制のメリットは、各事業・各地域で培ったノウハウの横展開がスムーズになることです。その象徴が当社の特徴である「にじみ出し」です。1つの事業の知見を異なる領域に少しずつ広げていく手法であり、それにより当社はビジネスを拡大してきました。
村田製作所 代表取締役副社長の南出雅範氏(2025年5月取材時は代表取締役 専務執行役員 コーポレート本部本部長)(撮影:榊水麗)
代表例がセラミックスです。創業者はセラミックスを「不思議な石ころ」と呼び、その特性を活用しながら事業領域を広げていきました。誘電体や圧電体、半導体など、異なる商品に展開していったのです。技術を投入する先も、ラジオやテレビに始まり、コンピューターやスマートフォン、自動車、AIなど、伸びる市場へと軸足をシフトしてきました。こうしたにじみ出しの根底に、グループ横串の連携があります。







