悩んだ挙句、あなたは真ん中の竹コースを選んだ。友人も同じ竹コースを選んだので安堵した。ケースにもよるが、松竹梅の選択割合はおおよそ2:5:3といわれる。両端、つまり最高値の松コースと最安値の梅コースを回避する要因として損失回避が働き、真ん中の竹コースを選ぶことで良しとするのである。
極端性を回避する心の働きを活かすために、松と竹の価格差は大きめにして、竹と梅の値段の違いを少なくすると効果的だという指摘もある。一番安い梅メニューに少し金額を足した竹メニューでも、金額以上の高い満足感を得られることが、消費者やお店にとって最適のようだ。
思わず買ってしまう“おすすめ”の魔法
――潜在意識を刺激することで合理的な意思決定を狂わせる
人々の心に刺さるモノやコトをおすすめすることで、成長を実現している企業は多い。アマゾンなどのネット通販サイトにアクセスすると、購入したモノやサービスの履歴データに基づき、ユーザーの好みに合った商品や書籍などが表示される。これをきっかけにして、おすすめされたモノを思わず買ってしまった人は多いだろう。
ファッションに敏感な若い知人は、「おすすめされると、買わずにはいられない」と話していた。「今月のおすすめファッションアイテム」と件名の付いたメールが通販サイトから自動で送信されてくると、彼は必ずサイトにアクセスしてしまう。やめようと思っていても、なかなかやめられないとよく口にしている。
アクセスしたほとんどのケースで、彼は対象の商品を買ってしまう。購入したアパレル製品を必ず着るのかというと、着ないものもある。
「使わないものがあることも理解しているし、おすすめ品を買うことが合理的ではないとわかっているが、商品を見た瞬間、欲しいという気持ちが先走ってしまう。買うのを見送ると、何とも言えない残念な気持ちに陥る」と知人は話していた。
客観的に分析すると、現状維持バイアス、損失回避などの心の働きが影響し、合理的な意思決定を下すことが難しくなっているのだ。