この点に関してユニ・チャームでは、「不織布・吸収体商品の普及率はその国の1人当たりGDPの水準と大きく関係しており、当社では、1人当たりGDPが3000ドルを超えると生理用品やベビー用紙おむつの普及が一気に進み、さらに1人当たりGDPが高まっていくと生理用品やベビー用紙おむつの普及率が高止まりする一方で、大人用紙おむつやペットケア用品の普及が拡大すると考えています」と分析し、マクロ経済の動向を踏まえながら戦略を立てています。

 市場の成長ステージが異なる国・地域を横断して、それぞれの国や地域が抱える課題やニーズに合う商品を段階的に取りそろえることによって、低価格競争、薄利多売を避け、高い収益性を維持できる可能性が高まります。つまり、市場のニーズを的確にくみ取った商品を投入し、他社製品との差別化を図り、コモディティ化による利益率の低下を回避してきたところに、ユニ・チャームの収益力の高さの秘密があると言えます。

 このようにユニ・チャームは、経営資源を不織布・吸収体の加工・成形事業に集中させ、その中で差別性、収益性の高いものは海外へと広げる「本業多角化、専業国際化」を展開して成功してきました。

 花王やライオンは、ユニ・チャームと同じくドラッグストアで日用品を販売しているものの、商品ラインナップは幅広く、総花的な経営となっています。一方で、ユニ・チャームは、商品により用途は異なりますが、不織布・吸収体を用いた商品に絞っているのです。不織布・吸収体をコアとして、そこから派生する製品をターゲットや特性別にセグメント分けして開発し、世界各国に展開しています。

 ここまで説明してきたライフステージ戦略として強調したいのは、市場ステージの異なる国・地域で、現地のニーズに合う商品展開をしていることです(後述)。それを徹底することによって、商品の高付加価値による収益性維持が実現できているのです。