■企業活動とネイチャーポジティブ対応

 上記のような自然資本が企業活動に与えるリスクは大別して3種類あります。1つは、自然資本や生態系サービスが劣化することで生じる「物理リスク」です。2つ目は、政策や技術、規制、消費者の選好などの変化などで生じる「移行リスク」、そして3つ目は生態系・金融などシステム全体の崩壊により生じる「システミックリスク」です。

 これらのリスクへの対応としてネイチャーポジティブは企業にとって重要ですが、一方でそれは企業にとって「機会」にもなりうるとされています。自然に対するネガティブな影響を削減することやポジティブな影響を与えることは、自然だけでなく、新たな市場へのアクセスや評判の向上などを通じ、組織にも好影響を与える可能性があります。

 こうしたリスク・機会の仮想的な例として廃棄物の排出を考えると、排出は環境に対し負荷を与え、物理リスクの要因になります。同時に、その削減に向けた取り組みが不十分であれば、経済・社会としてネイチャーポジティブへの対応が進む中で評判や取引条件、規制等の面で不利になる可能性もあり、移行リスクの要因にもなります。

 こうしたリスクに対し、リサイクルなどによって廃棄物の排出を削減することは、環境に対する負荷を低下させると考えられます。また、廃棄物の削減に資する製品やサービスを提供できれば、新たな事業機会になる可能性があります。さらに、こうした活動による評判の向上等の機会にもつながると考えられます。

 上記はあくまで仮想的な例ですが、企業は自然資本を守るためにも、また企業としてのリスクを減らし機会を獲得するためにも、ネイチャーポジティブに対応していくことが重要と考えられます。

<連載ラインアップ>
■第1回 人間の活動により価値は40%減少、自然資本の損失が企業活動に与える「3つのリスク」とは?(本稿)
■第2回 キリンHD、日本製鉄、神戸製鋼所…国内企業は生物多様性の保全にどうコミットしているのか?(10月17日公開)
■第3回 明治HDの「アグロフォレストリー農法」、花王の「ハイリスクサプライチェーンからの調達」とは?(10月24日公開)

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