コロナ禍が落ち着いてからオフィス勤務に回帰する風潮にある中、富士通はその流れに合わせるのではなく、生産性や従業員の声をデータから分析し、最適な働き方やオフィスのあり方を追求していくとのことです。

 働く人のEXが充実する多種多様なプログラムが展開されている富士通ですが、それを支えているのが経営陣のリーダーシップと専門組織の存在です。きっかけは2019年に代表取締役社長に就任した時田隆仁氏が、「IT企業からDX企業へ」と宣言し、「フジトラ」を開始したことでした。これにより、挑戦的な企業の姿勢へと変わることになったのです。また、CHRO(最高人事責任者)の平松浩樹氏が富士通に「変革の風を起こす」人事面での改革を推進しました。

 従業員のエンゲージメント向上とキャリアオーナーシップの支援を目的とした専任組織を設置している富士通では、経営陣のサポートを得ながら組織が全体の企画を担い、経営者や事業責任者の視点から組織の成長を促す人事のプロであるHRBP(Human Resource Business Partner)が現場視点でのフィードバックや施策展開を担っています。このように経営と現場の視点をしっかり組み合わせながら、従業員の働きがいを支援しています。

 富士通では社員の自律と挑戦による成長がパーパス経営の基盤になるとしています。EXの充実にも資する人事戦略を今後どのように展開させていくのか興味があるところではないでしょうか。

 同社Employee Success本部Engagement & Growth統括部の佐竹秀彦部長はこのことについて、「ジョブ型人事制度のフルモデルチェンジから3年が経過したものの、まだマネジメント層や従業員のマインドセットの変革、属人化している仕事の標準化が十分でないと感じています。制度の変革と従業員のマインドセットの変革をバランス良く進めなければ、変革は成功しないと考えています。これからも両者のバランスの実現に向けて、適所適材の推進に注力していきます」と“変革”をキーワードに、社員1人ひとりの適性が活かせる人事マネジメントの展開を示しています。

●取材協力
佐竹秀彦氏(富士通株式会社Employee Success本部Engagement & Growth統括部部長)   
伊藤正幸氏(富士通株式会社Engagement & Growth統括部キャリアオーナーシップ支援部部長)