しずおかフィナンシャルグループ 代表取締役社長の柴田久氏(撮影:本永創太)

 持ち株会社体制に移行して初めての中期経営計画(以下「中計」)が進行中のしずおかフィナンシャルグループ。従来の3年計画から5年計画に変更し、期間中に目標数値の見直しなども行いながら、2030年度のありたい姿を目指して、次々と打ち手を繰り出している。柴田久社長へのインタビュー前編では、持ち株会社体制の進捗と中計の概要、特徴などについて聞いた。(前編/全2回)

昨年立ち上げた2つの新会社も追い風に

柴田 久/しずおかフィナンシャルグループ 代表取締役社長

1986年静岡銀行入行。理事経営企画部長、執行役員呉服町支店長、常務執行役員首都圏カンパニー長兼東京支店長などを経て、2017年から2022年まで頭取を務める。2022年10月よりしずおかフィナンシャルグループ取締役社長に就任(現任)。静岡銀行取締役を兼務(現任)。全国銀行協会理事、全国地方銀行協会会長なども務めた。

――2024年2月に第1次中期経営計画(2023~2027年度)の財務目標の引き上げと株主還元方針の拡充を発表されました。経営環境には追い風が吹いていると言えますか。

柴田久氏(以下敬称略) 今の中計はマイナス金利の世界で作ったものですから、われわれ自身が変革をしながら事業領域を拡大し、オーガニックな成長の中でどれだけ伸ばしていけるかが課題となり、正直控えめな計画にならざるを得ませんでした。

 足元では、預金・貸出金を中心とした伝統的な業務が着実に進捗するとともに、戦略投資面でも、SFGマーケティングとSFG不動産投資顧問の2社を新設するなど、グループ機能の拡充を進めました。こうした成長戦略への取り組みを強化し、持続的にROEを高めていく姿をより明確に示すべく、これまでのROE目標(純資産基準)に加えて株主資本基準のROE目標を掲げ、2027年度に連結ROE(株主資本基準)7.5%程度としました。

 株主還元方針の見直しは、PBR(株価純資産倍率)1倍割れに対する課題認識が背景にはあります。PBR向上を目的として、銀行は政策投資株式を売却すべきとの議論がありますが、本当にそうでしょうか。

 リーマンショックや東日本大震災、コロナショッククラスの環境変化が生じた局面でも、地域の経済・金融を支えていくのがわれわれの使命です。そのためには資本の中にある程度のバッファは必要であり、政策保有株式をゼロにすることが金融の安定化につながるかどうかは疑問が残ります。

 一方で、われわれが保有する政策投資株式を含めた適正な自己資本比率をどう捉えているのか、機関投資家から指摘があったのも事実です。それを認識した上で、資本効率を上げながら株主還元も充実させ、株主が期待する経営とわれわれが地域から求められる金融の両立を目指して、株主還元方針の見直しを行いました。

 そこで、従来、総還元性向は中長期的に50%程度を念頭に置きながら、配当性向40%以上へ累進的に引き上げていくとしていた目標を、「配当性向50%へ累進的に引き上げる」ことに変更しました。

――2022年10月に持ち株会社体制に移行して約1年半が経過しましたが、ビジネスの進捗、手応えはいかがですか。

柴田 しっかりとした手応えを感じています。私たちは2005年からグループ経営戦略を導入し、連結計画を作り始めたのですが、やはり銀行の下にグループ会社を置くと、仕事を与える・与えられるという主従関係ができたり、受け身の姿勢が出てきたりしました。

 それらを払拭するために、持ち株会社体制に移行する前からグループ間での人材交流や若手の登用などを積極的に行ってきたのですが、グループシナジーの最大化に向けては道半ばの状況でした。

 持ち株会社体制への移行に当たっては、銀行と並列の会社と銀行の子会社とする会社を分けてストラクチャーを考え、前者の並列となる会社については、親子の関係ではなく、自立(自律)と連携の中で大きくなることを目指してほしいと訴えました。

 例えば、静銀経営コンサルティングや静銀リース、静岡キャピタル、静銀ティーエム証券などがありますが、各社には、銀行からお客さまを紹介されるだけでなく、自分たちでお客さまを開拓したり、場合によっては、銀行にお客さまを紹介するといった動きをしてもらいたいと伝えています。

 そのかいあって、より自立(自律)や連携を意識した動きが見られるようになりましたし、それぞれの会社が自分たちの事業領域を拡大しようと新しいことに取り組む気運が高まっているように思います。

持ち株会社体制移行直後(2022年10月)のグループ体制 ※現在のグループストラクチャーは上記と異なる
出所:静岡銀行グループの現況統合報告書2022(P.33)
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