個別最適の優先で会社は成長してきたが・・・

 柔軟な事業体制をつくる上で、まず課題となったのが、社内に混在していた「業務システム」だ。マクニカは1972年の創業以来、仕入先や顧客の要望に一つ一つ丁寧に応じることで、信頼を築いてきた。個別最適を追求することはマクニカの強みなのだが、顧客に応じる形で取引条件や取引方法をも変えてきた結果、社内にはいくつも「業務システム」が混在するようになった。

 また、顧客によって取引方法が違うため、業務プロセスの標準化は難しい。仕事のノウハウも属人化してしまい、仕事の引き継ぎもできないといった問題もある。システムがバラバラなのでデータ処理は個人の作業に頼る部分が多い。

 経営層が定期的に求める統計データレポートを作成するときは、各担当者が業務システムから自分の担当するデータを抜き出し、エクセルで処理。そのデータを別の担当者が集計した後で、他の業務システムに入力するような手間をかけていた。人の頑張りで支えられた事業運営は、生産性を押し下げるばかりではなく、働く人たちのモチベーションにも影響を及ぼしかねない――。市場環境の観点からも、内部事情からも「次世代システムの導入」は大事なテーマになった。

次世代システムは「10年後も楽しく働ける会社」のため

 2018年に導入を決めた「次世代システム」は、「10年後も楽しく働ける会社のため」のものとした。何を楽しく感じるかは個人によって違うだろうが、新しいシステムでは、非生産的な仕事はシステムに任せ、人はより付加価値の高い、楽しい仕事を、というメッセージが込められていた。

 次世代システムでは、顧客からの注文に応じた部品調達から、在庫管理・出荷、請求・支払いまでの流れを「一元管理」できるようにした。注文データから現段階の売り上げまで全ての製品データ、取引データ、マーケティングデータを「見える化」し、日々の業務で分析や検証のためにも随時分析データを活用できるようにした。

 半導体事業では、200社近いサプライヤーがあり、それぞれの担当者たちがエクセルでデータをまとめていた。報告レポートを完成させるまで2週間もかかっていたことがある。それがレポート作成まで自動化できる。エクセルデータと格闘していた社員たちのワークスタイルは大きく変わった。