みずほフィナンシャルグループ 執行役 アセットマネジメントカンパニー長、みずほ銀行 常務執行役 アセットマネジメント部門長の佐藤紀行氏(撮影:宮崎訓幸)

 みずほフィナンシャルグループが資産運用ビジネスの強化を進めている。2023年度を起点する中期経営計画では「『資産所得倍増』に向けた挑戦」を注力ビジネステーマに掲げ、全方位で各施策に注力する。日経平均株価が史上最高値を更新する中、長くいわれ続けてきた「貯蓄から投資へ」の掛け声をいかにして定着させようとしているのか。同社で資産運用ビジネスを統括する執行役 アセットマネジメントカンパニー長の佐藤紀行氏に話を聞いた。

中期経営計画で「資産所得倍増」を目標に掲げる

――2024年2月、日経平均株価が34年ぶりに最高値を更新、同3月には市場初の4万円台に乗せました。佐藤さんは30年以上、国内外で資産運用業務に携わってこられましたが、現在の日本株の状況をどう見ていますか。

佐藤 紀行/みずほフィナンシャルグループ 執行役 アセットマネジメントカンパニー長、 みずほ銀行 常務執行役 アセットマネジメント部門長

1989年慶応義塾大学経済学部卒。海外での外資系運用会社の経営経験等も有し、資産運用業に精通。伝統的資産からプライベート資産まで幅広い運用実績を持ち、過去の担当ファンドにて受賞実績多数。2023年4月から現職。

佐藤紀行氏(以下敬称略) 非常にいいムードになっていると思います。東京証券取引所が上場企業にPBR(株価純資産倍率)の改善要請を出したこともきっかけの一つでしょう。要請が出された2023年には、「東証が言ったところでPBRが簡単に上がるものではない」といった批判の声も一部にはありましたが、実際には多くの企業が自社株買いや投資家との対話の強化などの施策に本気で取り組みました。それらが海外の投資家からも評価され、現在の株価に反映されているものと考えます。

 市場環境も変化しています。この30年間はデフレが続いていましたが、そこからも脱却しつつあります。デフレ時代にはいわゆる内部留保(利益余剰金)をキャッシュで持ったままで経営をプロテクトできるような保守的な空気が蔓延していましたが、いよいよROE重視の投資姿勢に向かい始めました。

 個人投資家についても同様です。政府は長らく「貯蓄から投資へ」と声を掛けてきましたが、なかなかその流れは起きませんでした。やはりデフレが続いていた影響で、キャッシュで持ち続けていた方が余計なリスクを取らずに済み、むしろ価格変動リスクにさらされず財産を防衛できていたためです。しかし、最近ではインフレ傾向となっているため、キャッシュで持っているだけでは将来の価値が大きく目減りしてしまいます。それを補うだけの資産形成を行う必要が出てきました。

――人生100年時代には資産寿命を延ばすことが大切だといわれます。老後資金2000万円問題も話題になりました。政府は「資産運用立国」を掲げ、2024年1月には新NISA(少額投資非課税制度)も始まりました。

佐藤 日本における個人金融資産は2000兆円を超え、その5割強が預貯金だといわれています。資産運用への関心・機運がかつてないほど高まっている今、私たち金融機関としては、そのニーズにきちんと応えていくことが大きな使命です。

 みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほFG)では、2023年5月に新たな中期経営計画を発表しました。そこでは、「注力ビジネステーマ」の筆頭項目、一丁目一番地に「『資産所得倍増』に向けた挑戦」を掲げています。銀行、信託、証券、アセットマネジメントの各機能を生かした「オールみずほ」で、質の高いサービスを提供していきたいと考えています。