セブン-イレブンは2023年11月より、前年に引き続き「ブルーマウンテンブレンド」を期間限定で販売した。税込み250円は通年で販売する定番コーヒー(110円)の2倍以上の価格

 コンビニが半世紀もの間、成長を続けてきた裏側には中軸となる商品の存在があった。そうした特別な販促をせずともお客の支持を受け、売れ続けてきた商品に、近年、“疲労”が見られ、売上が芳しくない。その中で、成長著しいのが、カウンターで販売するコンビニコーヒー。実はここには日本の成熟マーケットを踏まえた「市場拡大理論」が隠されていた。

シリーズ「日本のコンビニに変革の歴史を学ぼう」
(第1回 業態の変革)セブン-イレブンの最初の分岐点「2号店の否定」が後の成長をもたらした理由
(第2回 出店の変革)稚内市に異例の飛び地出店、“業界の常識外れ”を可能にしたローソンの手法
(第3回 立地の変革)店舗は小さいのにセブン-イレブンが売上日本一のチェーンになれたわけ
(第4回 商品開発の変革)コンビニコーヒーの「市場拡大理論」に成熟マーケットの攻略法を学ぶ(本稿)


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 かつてコンビニ「トリビア」(豆知識)に「なぜコンビニの雑誌コーナーは窓際にあるのか?」というものがあった。「店舗の外から立ち読みをするお客が見えると、安心して入店できる」が一般的な回答で、他にも「店内に入ったお客が通路を1周するだけで漫画雑誌、ビール、米飯類(弁当・おにぎり)、たばこと必要な商品を買えるから」といった利便性を挙げる識者もいた。

 昔のコンビニには「漫画雑誌」「ビール」「米飯類」「たばこ」というコンビニを利用する若い男性客に欠かせない商品があった。店舗はこの4種類の品揃えをしっかりと行っておけばベースとなる売上を立てることができた。

 しかし、ビールを筆頭に成人1人当たりのアルコール消費量は1992年度の101.8ℓをピークに2021年度は74.3ℓまで減少している。しかも、第3のビールなどの低価格酒類と、低アルコール飲料の消費量が増大する一方、ウィスキーや清酒などの高アルコール飲料の消費量が大幅に減少している。一部の層にアルコール度数9%の缶チューハイが支持されているものの、全体ではアルコール離れが進んでいるわけだ。

 喫煙率も大きく低下している。成人男性の喫煙率は1966年の83.7%をピークに、アルコール消費量が最も多かった1992年に60.4%、2018年には27.8%と大幅な減少を続けてきた(JT全国喫煙者率調査)。毎年のように続く値上げにより、たばこの売上自体は販売個数ほど落ち込んではいないが、マイナストレンドが続いていることは確かである。