世界的な健康志向、環境負荷が低い植物タンパク質への注目などから植物由来(プラントベース)食品への関心が高まっている。こうした世間の動きを追い風に市場に代替肉や代替魚などが出回る中、キユーピーが発売したのが代替卵「ほぼたま」。卵消費量国内1位の企業がなぜ「卵でない卵」の製品を開発したのか。その理由をプロジェクトリーダーの綿貫智香氏に聞くと、「卵への愛からだった」と言う。
「なぜ卵でない卵?」という声もあった
「本当に、ほぼたまご!」
これはキユーピーの卵代替食品「HOBOTAMA(ほぼたま)」に対する利用者の賞賛レビューだ。特に卵アレルギーの人には朗報で「12年ぶりにオムライスを食べた、人生を取り戻せた!」という声もあった。
当初、ほぼたまは業務用のみだったが、発表後に一般消費者から「買いたい!」という声が多数届いたことで、一般市場向けの商品も用意。現在、同社ECサイト「Qummy」などでスクランブルエッグ風と加熱用液卵風を一般消費者に向けて販売している。また、こうした消費者のプラントベース食品への期待を深く受け止め、同社はプラントベース食品でサステナブルな食を提供する新ブランド「GREEN KEWPIE」(グリーンキユーピー)も発表し、今後、新たなサステナブル食品を提供していく考えだ。
業務用の発表からわずか2年弱で新ブランドを発足と、キユーピー社内に突風を吹かせたほぼたまだが、プロジェクトリーダーの綿貫氏は「最初にプラントベース食品の話を持ちかけたときの周囲の反応は『環境に良いのは分かるけど、本当にやるんですか』というものでした」と振り返る。「卵の良さを伝えたいなら、なぜ本物の卵を使わないんだとも言われました」(綿貫氏)
綿貫氏が代替卵に着目したきっかけは、米国のJUST Eggというスタートアップ企業の代替卵構想の発表だった。地球規模の環境変化に対し、自分たちの技術で解決策を作りたいという意図を感じ、綿貫氏は「私も20年研究部門におりましたが、同じ技術者として考え方にしびれるような気持ちになりました。そして『これってキユーピーでもできるよな』と思ったのです」と語る。
そこで、綿貫氏は社内のある大先輩に相談をする。そうしたところ「あの技術とあの技術を使えば、たぶんできるよ」というアドバイスをもらう。「それなら、やってみよう」と綿貫氏は心を決める。そして卵使用量日本一の企業で「卵なしで卵を作る」という逆転発想のイノベーション実現に突き進んでいく。