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 日本最大のAI専門メディア「AINOW」の編集長が、先進企業の生成AI活用法を大公開。本連載では、生成AIを企業に導入する手順、既存システムとの連携法、プロンプトエンジニアリング術にいたるまで実践的に解説した『生成AI導入の教科書』(小澤健祐著/ワン・パブリッシング)から、内容の一部を抜粋・再編集。国内企業のベストプラクティスを題材に、生成AIを生かしたビジネス変革の方法に迫る。

 第2回目は、ベネッセグループにおける生成AIの活用事例を取り上げる。

<連載ラインアップ>
第1回 きっかけは入社式の安藤CEOのメッセージ、日清食品HDのCIOが語る生成AI導入
■第2回 ベネッセグループ1万5000人が使う「Benesse Chat」は、なぜ生まれたのか?(本稿)
第3回 ベネッセグループに学ぶ、生成AI導入「5つのステップ」と「壁」の乗り越え方
第4回 日本最大級の求人情報サイト「バイトル」を運営するディップの生成AI活用法

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ベネッセホールディングス:いち早く独自のチャットツールを導入

生成AI導入の教科書』(ワン・パブリッシング)
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【​お話をうかがった方】
株式会社ベネッセホールディングス
データソリューション部 部長

國吉啓介さん

 デジタル商品企画開発、業務プロセス変革、データ分析組織の立ち上げなどを経て、現在はベネッセグループにおけるデータ利活用によるDX推進を担当。博士(経営学)。滋賀大学データサイエンス学部インダストリアルアドバイザーなど、社外でもデータ利活用に関する活動にも従事する。

――株式会社ベネッセホールディングスは、Microsoftのパブリッククラウド Microsoft Azure上で提供するAzure Open AI Serviceを活用したAIチャットサービスの運用を、2023年4月14日からグループ社員約1万5000人向けに運用開始すると発表したことで話題になりました。

 今回は、そんなベネッセのデータ利活用部門(データソリューション部)で、生成AIの導入を担う國吉啓介さんにお話をうかがいます。まずはお仕事の内容を教えていただけますか。

國吉 ベネッセは全社戦略にもとづき、2021年より社長直下に、デジタル部門、IT部門、人事部門、DX推進のためのコンサル部門などが一体となる組織としてDigital Innovation Partners(DIP)を設置し、全社横断的にDXを推進しています。私が所属するデータソリューション部はDIPの下部組織で、分析やAI開発を通した事業価値創出、そのためのデータ環境整備や人財育成などを行っています。

 私たちのミッションは、社会の構造的な課題を解決するために、問いを立て、データをつなぎ、新しい価値を生み出すことです。データ環境整備などを通して業務効率化を進めつつ、各事業部内への兼務などをしながら、事業会社として新しい価値あるサービスを生み出すべく取り組んでいます。そのなかで、生成AIの活用も進めているんです。

――データ利活用部門と各事業部門で兼務なども取り入れて、生成AI活用を進めているんですね。具体的にどのような取り組みを行っていますか。

國吉 最初のステップとして、情報流出などのリスクを軽減しながら社内で生成AIを活用できるようにするために、「Benesse Chat」という独自の環境を構築しました。この「Benesse Chat」を皮切りとし、生成AIを活用する3つの主要なプロジェクトを進めています。

 ひとつめが次世代型コンタクトセンタープロジェクトです。従来のコンタクトセンターでは、お客様から見て、すぐにつながらない、または期待する回答を得られないという課題がありました。それを改善すべく、生成AIを活用して、お客様がいつでも短時間で適切な回答を得られるような新しい形のコンタクトセンターの実現を目指しています。この取り組みにより、サービスの生産性も向上することを期待しています。

 ふたつめが自由研究のお助けサービス「自由研究お助けAI」です。このサービスは、親子での利用を前提としており、単に答えを提供するのではなく、子どもたちの考える力を育てることを目的としたAIです。生成AIの登場により、利便性が向上する一方で、子どもたちの思考力が損なわれるのではないかという懸念から、教育サービスにおける活用については慎重に議論されています。

 ベネッセは、これからの未来を生きていく子どもたちに、安心・安全な環境の中で生成AIに早くから触れ、学びに生かしてほしいと考えています。そして、小学生の親子向けに安心・安全に配慮し、子ども自身の思考力の向上や興味関心を広げるため、夏休みの自由研究をテーマに、ベネッセが学習向けに独自にカスタマイズした生成AI「自由研究お助けAI」を開発しました。

 そして最後が、「次世代型Webサイトプロジェクト」です。人的な工数が多く発生していたWebサイト制作や運用業務において、生成AIをどのように活用できるのか、ベネッセが主体となりながら、株式会社メンバーズ、株式会社ビービットと連携してプロジェクトを進めています。具体的には、3社が協働しながら、生成AIを活用して、Webサイトの制作プロセスの抜本的改革、ライティング業務の自動化、PDCAの高速化などの5つの主要な要素に焦点を当てて取り組んでおり、進研ゼミなどのWebサイトの運用や構築の効率化を目指しています。