上記のBMWグループのサステナブルなモビリティに対する考え方を具現化したのが、「BMW i Vision Circular」というコンセプトモデルである。2021年9月にBMW AGのお膝元、ミュンヘンで開催された国際モーターショー「IAA Mobility 2021」(かつてのフランクフルト・モーターショー)において公開された。同イベントのプレゼンテーションでツィプセ氏は「BMWは生産から車両のライフサイクル全体に至るまで、資源効率における主導的地位を拡大したいと考えています」と述べている。
ツィプセ氏が次々と繰り出すBMWのデジタル化施策
ツィプセ氏就任後、「4つのRE:」を実現するためにどのようなデジタル化施策を行ったのか。象徴的な出来事を時系列で見ていこう。それらは企業のシンボルであるロゴマークの刷新から工場の生産システム、製品開発、マーケティング・コミュニケーションの領域にまで及んでいる。
[2020年3月]
新しいロゴマークを発表。開放性と明快さを伝え、自動車の世界を中心とした企業からテクノロジーやコネクティビティを重視した企業への移行を表現した。
[2021年4月]
スマートマニュファクチャリングへの挑戦。エヌビディアが提供する、メタバース(仮想空間)で共同作業を行うためのプラットフォーム「オムニバース(Omniverse)」を採用。デジタルツインを活用して、工場建設や新生産ラインの設置前に従業員、ロボット、建物、組み立て部品を含め、工程に必要な全要素をシミュレートし、最適化するというもの。計画時間の短縮、柔軟性や精度を向上させ、最終的には生産計画プロセスが30%効率化されることが期待される。
(参考)エヌビディアによるYouTube画像
https://www.youtube.com/watch?v=6-DaWgg4zF8&t=7s
[2021年9月]
BMW独自のメタバース・プラットフォーム「JOYTOPIA」をローンチ。メタ(Facebook)やグーグルとも協業するメタバース制作会社JOURNEEと組み、ミュンヘンで開催されたIAAモビリティ・インターナショナルモーターショーの先行イベントとして実施。BMWのサステナビリティのポリシーと関連した「Re:THINK」「Re:IMAGINE」「Re:BIRTH」という3つの要素で構成される。初ライブに人気アーチスト・コールドプレイ(coldplay)を招聘したにもかかわらず、アーカイブ映像は1カ月でわずか3万再生と振るわなかったのは残念だった(BMWのチャンネル登録者は120万人以上)。
[2022年1月]
CES 2022において電気信号でボディカラーを変える技術「iXフロー」を発表。ベースは、電子書籍リーダー向けディスプレイを手がけるEインク社によって開発された技術である。車体表面のコーティングには、人間の髪の毛の太さに相当する大きさのマイクロカプセルが配され、電気信号によってマイクロカプセルが刺激されると電気浮動テクノロジーが車体表面の色素を変化させ、ボディカラーが変わる仕組み。
(参考)色が変わるBMW iXフローのYouTube動画
https://www.youtube.com/watch?v=KX_emTunifs
[2022年6月]
BMWグループのMINI USAがメタのメタバース・プラットフォーム「Horizon Worlds」上で「MINIverse」を開設。仮想現実(VR)ヘッドセット「Meta Quest 2」を装着して使用する。「MINIverse」内ではユーザーの好みでカスタマイズしたMINIに乗って他のユーザーと競走するレースゲームが楽しめる(無料)。現時点では米国、カナダ、英国のみのサービス。メタの「Horizon Worlds」に没入型の仮想エリアを開設した企業はMINIが初めて。