グーグルも韓国当局に対し、外部決済の容認を表明。だが同社は「利用者が代替決済システムを選択した場合、開発者はグーグルに対し決済金額の11%を支払わなければならない」と条件を付けた。つまり、開発者が自社決済を用意したとしても、料率は低くなるが、手数料そのものを回避することはできない。

 この計画に対し韓国の通信規制当局は22年2月、開発者に課される手数料が4%ポイントしか下がらないと指摘。アップルの計画についても「具体性に欠ける」とし、2社のコンプライアンス(法令順守)計画には改善が必要との認識を示した。

 米ニューヨーク・タイムズによると、グーグルの広報担当者は今回の試験プログラムについて、韓国での対応と同じく「利用者が当社の決済を使わない場合でもサービス料金を受け取る」と述べたが、後に同氏は「そのような料金を含まない取引の可能性もある」と示唆した。ただ、「試験プログラムは始まったばかりであり、スポティファイなどのパートナーと協力して詳細を検討する計画だ」とも述べており、具体的な内容は分かっていない。

アップル、オランダで毎週500万ユーロの罰金

 一方、米CNBCは、グーグルの新たな動きはアップルに圧力をかけることになると報じている。

 オランダでは出会い系アプリ運営会社の苦情を受けてアップルを調査していた消費者・市場庁(ACM)が21年12月、外部決済を使えないようにしているのは競争法に違反すると結論付け、アップルに外部決済手段を認めるよう命じた。

 これに対しアップルは「利用者の利便性とセキュリティーが損なわれる」と反論。当局の決定を不服として控訴しているが、地域限定で外部決済を容認する意向も表明した。

 ただ、アップルは妥協案として、出会い系アプリの開発者に対しオランダでしか使えないアプリを新たに用意するよう求めている。また、その場合でもアプリ配信手数料として決済額の27%を請求するとしている。こうしたアップルの対応をACMは認めておらず、同社に対し週ごとに500万ユーロ(約6億7000万円)の罰金を科している。

アップル、批判受け一定の譲歩

 アップルは批判をかわすために一定の譲歩を示してきた。21年1月にはApp Storeで得た年間収益が計100万ドル(1億2000万円)以下の開発者を対象に手数料を30%から15%に下げた。21年8月には、アプリ開発者らが起こしていた集団訴訟で和解した。これに伴い、開発者がアカウント登録を通じて入手した利用者の電子メールアドレス宛てにメッセージを送り、他の決済方法を案内することを容認した。

 21年9月には、App Storeを調査していた日本の公正取引委員会と和解。これに基づき一部のアプリを対象に手数料の支払いを回避しやすくする措置を取った。具体的には、アプリ内に開発者のウェブサイトへのリンクを1つ設置することを認めた。開発者はこのリンクを介し自社決済サービスに利用者を誘導できるようになった。

 ただ、アップルはこれに条件を設けている。雑誌や新聞、書籍、音楽、動画といった購入済みのデジタルコンテンツやサブスクリプション(継続課金)コンテンツを閲覧・視聴するアプリのみを対象にし、App Storeに大きな収益をもたらすゲームは除外している。

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