高齢者の通話時間が長引く理由
「そもそも高齢者に着目したのは、電話をかけてくるお客の中で高齢者が占める割合が増え、それに伴って通話時間が長引くようになってきたからです」(山田氏)
例えば、カメラの使用方法について問い合わせてきたのに、自分がなぜカメラ好きになったのかといった具合に話が脱線したり、同じ話を何度も繰り返すといったケースが典型だという。話が長くなれば、他のお客の応対ができなくなり、コールセンターの生産性は落ちていく。
2021年の高齢化率は29.1%だったが、2030年には32%に達する。同様に、75歳以上の後期高齢者は15%から20%に増加する。社会の高齢化が進むとともに、こうしたケースはさらに増加していくはずだ。
また、同社がバックオフィスの運営を手掛けている企業は約200社。いずれは、それぞれの会社向けに高齢化に合わせた対応が必要になってくることが予想される。そこで、高齢化にフォーカスした取り組みについて考えるようになったのだという。
2011年には東京大学の産学ネットワーク「ジェロントロジー」に参画。ジェロントロジー(老年学)とは、高齢者や高齢社会の諸問題を解決するために生まれた学際的学問で、同社では超高齢社会におけるコンタクトセンターの在り方について研究し、シニア応対の基準をつくったりしていた。
そうした過程で、自分の声が加齢性難聴の方にどう聞こえているかを体験できる学習ツール(『ジェロトーク』)の開発を聴覚心理や加齢性難聴に詳しい株式会社オトデザイナーズと共同で行った。両社で加齢性難聴の視覚化と学びやすさについて、議論と検討を重ねながら2013年に何とか誕生にこぎつけた。