少子化、グローバル化、消費者の多様化、働き方の多様化などを背景に、日本でもダイバーシティの推進に取り組む企業が増えてきた。しかし、ダイバーシティの初歩の初歩ともいえる女性の活用ですら、うまくいっているとは言い難い。どうすれば多様な人が自分らしく働けるのだろうか。「女性が活躍する会社ランキング」「人を活かす会社ランキング」をはじめ、数多くのランキングで1位に選出されてきたジョンソン・エンド・ジョンソンのビジネスユニットHRマネジャーの工藤麻依子さんに聞いた。
ダイバーシティは創業当初から企業文化の中核
ジョンソン・エンド・ジョンソン(以下、ジョンソン&ジョンソン)の「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン」(以下、DE&I)への取り組みを理解するために欠かせないのが、同社の企業理念であり倫理規定でもある「我が信条(Our Credo、クレドー)」だ。1943年に打ち出されたもので、事業運営から個人の仕事に至るまで、全社員は「我が信条」に基づく意思決定が求められる。「私たちの羅針盤」という言い方をすることもあるという。
「我が信条」に書かれているのは4つのステークホルダーに対する責任について。1つ目は、顧客に対する責任、2つ目が社員に対する責任、3つ目が地域社会への責任、4つ目が株主に対する責任だ。
「DE&Iについては、2つ目の社員に対する責任のところに書かれています。そうした意味でも、DE&Iは、私たちの文化の中核の一つとして重要視されてきたのです」と話すのはビジネスユニットHRマネジャーの工藤麻依子さん。
少し長いが引用しよう。
我々の第二の責任は、世界中で共に働く全社員に対するものである。
社員一人ひとりが個人として尊重され、受け入れられる職場環境を提供
しなければならない。社員の多様性と尊厳が尊重され、その価値が
認められなければならない。社員は安心して仕事に従事できなければならず、
仕事を通して目的意識と達成感を得られなければならない。待遇は公正かつ
適切でならなければならず――
と続いていく。ここで求められているのは、まさにDE&Iそのものだ。
「歴史をさかのぼれば、創業当初、まだ女性が働くのは珍しい時代に、ジョンソン&ジョンソンでは女性社員の比率が半数を超えていました。ですから、どこかのタイミングでDE&Iに取り組んだわけではなく、最初から多様な文化を育みながら、現在までビジネスを継続してきたのかなと思います」(工藤さん)