D&Iにエクイティ(公正性)を加えた理由

「これまでの名称は『ダイバーシティ&インクルージョン』でしたが、今年から『ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン』として訴求を進めています」(工藤さん)

 ダイバーシティとは多様性。多様な人がいるという状態を表している。それに対してインクルージョンは包括性。多様な人たちがお互いに尊重し合い、それがビジネスにつながっていくという意味で使われている。だから、欧米企業は、この2つの言葉をセットで使っているケースが多い。

 一方、「エクイティ」とは公正性。多様な人が、個性を生かして、さらに活躍できるようにサポートしていくという意味で「エクイティ」を入れたそうだ。どういうことだろうか。

「そのためには、まず、平等と公正の違いを理解する必要があります。その違いを私たちは、よく自転車に例えて説明します」(工藤さん)

 例えば、背が高い男性、女性、足が不自由な人、子供の4人がいたとする。この4人に対して同じ自転車を渡すのが平等だ。同社がやりたいのは、このような平等ではなく、異なる特性の4人に思い切り自転車をこいでもらうことだ。そうすると、男性はもっと大きな自転車がいいかもしれない。子供は三輪車、足が不自由な人は車いすのように手でこげるタイプが走りやすいだろう。

 このようにその人その人のニーズや状況に合ったツールやサポートを提供していくことが公正だ。DE&Iに公正性を加えることで、多様な人たちのパフォーマンスはさらに上がっていくことが期待できる。現在はニュースレターやワークショップ、DE&Iのイベントなどを通じてDE&Iの考え方を社員に浸透させているところだという。

コンセプトは「あなたの居場所」

「DE&Iのコンセプトの一つにYouBelong(ユー・ビロング)=あなたの居場所という言葉があります」(工藤さん)

 それは、誰でも自分らしくいられるし、自分らしさが受け入れられるので、自分らしく働ける。そんな会社にしたいという意味だ。自分らしく働ければ、働きがいを感じ、優れた発想も生まれやすい。そこからイノベーションが起こったり、より多様なお客さまのニーズに応えた製品の開発に結び付くだろう。そんな会社にするためには、一人一人がDE&Iを理解することが必要だ。

 しかし、これらの取り組みをしたからといってすぐに成果が現れるわけではない。「弊社もまだまだ発展途上。これからも継続的な取り組みが必要です」と工藤さんは話す。