昨年になりますが、コロナ下でバーチャル開催されたWorkTech 2020 において、「テクノロジーに対して、人々はこれまでで一番オープンになっている」と語ったのは、世界で最もスマートなオフィスビルの代表例 The Edgeを手掛けた不動産大手「OVG Real Estate & EDGE」の創設者兼CEOクーン・ヴァン・オストゥルム(Coen van Oostrom)氏でした。企業のバックオフィスでも、その業務生産性を上げるためにテクノロジーを導入できる領域や選択肢が増えてきています。
こうしたバックオフィス、特に経理、法務、人事部などのテクノロジー積極導入の流れの中で「総務部」の現状はどうでしょう。「何でも屋」といわれ、社内のどの部門にも当てはまらない雑務が常に降りかかってくる総務の現場では、その業務の体系的な整理もままならず、当然ながらジョブとしての確立もされず、残念ながら総務部にとってDXは程遠い存在なのが現実ではないでしょうか。
外資系企業では総務部はプロのジョブとして社内認知されている
外資系企業では総務部はプロの社内サービス部門として機能し、その顧客は社員(または施設ユーザー)であると公言、プロのジョブとして社内認知をされながら業務を遂行しています。それはグローバル企業では常識的であり、その業務の効率的な推進のためのテクノロジーも積極導入され、スタンダードとして整備されている企業も多いのです。
筆者も外資系企業7社で総務を25年ほど経験する中で、ほぼ全部の会社、そして毎年と言ってもよいくらい新しいスタンダードやテクノロジー、ツールなどがグローバルのラインからシャワーのように降り注いできました。その対応に日本国内であくせくしながらも新しいチャレンジ、気付き、失敗などを繰り返し経験できたことは、今思えば、貴重な時間だったかもしれません。
その一方で、これは日本企業でもあまり知られていませんが、実はその会社の海外拠点では総務部(コーポレートサービスと呼ばれるケースが多い)が専門サービス能力の高いチームとして実在しているというファクトがあります。私が経験した某グローバル系の日本企業でも海外出張しながら現地の総務部のレベルを確認し10カ国ほど回りましたが、それはリアルに感じました。
下手な英語でもよいのでなんとか会話しながら自社の海外「総務」業務の内容とレベル感を確認したことがある方ならご存じの通り、自社の海外拠点(欧米、オーストラリア、香港、シンガポールなど)では、意外と専門性を持ってきちんとサービスを実行しており、ローカルレベルでテクノロジーも導入するなど、むしろ本国は学ぶべきことが多いのです。
これは「本社指示」がなくともある意味当然で、その地域での競争原理、優秀社員の獲得の面からも当たり前のことなのです。