規則(ルール)か原則(プリンシプル)か

 このように、気候変動対応における金融の役割はきわめて重要ですが、だからといって、両者の関わりにどこまで規制で踏み込むかは難しい問題です。

 バーゼル委員会の責任範囲はあくまで銀行システムの安定であり、地球環境ではありません。いかに地球環境問題が国際的に注目を集めているからといって、さまざまな機関がプレゼンス拡大のため、自らの所掌を外れて首を突っ込んでは混乱のもとです。

 そこでバーゼル委員会は、「気候関連リスクは銀行の健全性や銀行システムにも影響する」というロジックを立てています。例えば、貸出先企業のビジネスが環境問題から持続不可能になってしまうと、銀行の貸し倒れリスクなどにもつながるという考え方です。

 また、強権的なやり方を採るのであれば、金融機関の貸出や投資がカーボンニュートラルであることを義務付けたり、この目的に合致しない貸出について規制上のリスク量(リスクウェイト)や自己資本負担を規則(ルール)により上乗せする方法も考えられます。

 しかし、この方法には難点もあります。例えば、何が地球の持続可能性に資するのか自体、論争の多い複雑な問題であり、各国の政治や世論の影響も大きく受けます。例えば、原発関連の融資を脱炭素化に貢献するものと捉えるか、それとも別の意味で地球の持続可能性へのリスクを増やすとみるかは議論の分かれる問題です。さらに、石炭火力の温室化ガス排出を減らすための融資を持続可能性に貢献するものと捉えるか、それとも「石炭火力関連」と一括りにするのかといった問題もあります。

 こうした中、今回バーゼル委員会が示した提案は「プリンシプル・ベース」、すなわち、強制的な規則(ルール)ではなく「原則(プリンシプル)」を示し、これに沿って各国や各金融機関が行動することを期待するものです。これは、現在の情勢下では穏当なやり方だと思います。