働きやすい環境だけではエンゲージメントされない

 では、エンゲージメントを高めるためにはどうしたらよいのだろうか。先ほどエンゲージメントは「従業員と会社が双方の成長・発展のために積極的に貢献し合う関係性」と捉えられると述べた。つまり、従業員と会社(経営者)が“相手の利益のために”行動するということである。

 通常、人が自ら利他的な行動をとるのは大きく2つのパターンに分けられる。

 分かりやすいのは“見返り”を求めて行う場合である。自分が相手のためになる行動をとることで、結果的に自分にそれ以上の“見返り”があることを期待してとる行動のことを、互恵的利他行動という。見返りにはカネやモノなどの直接的なものだけでなく、行為を通じて相手から評価される、自己成長につながるなどの間接的なものも含まれる。

 これを従業員と会社の関係性に当てはめれば、魅力的な給与、充実した福利厚生、熱中できる仕事、快適な職場環境、成長の機会、正当な評価などを会社が継続して提供することで、従業員も積極的に会社の発展のために行動するようになるはずである。

 しかし、世の中を見回してみると給与が高く職場環境も良い大企業、挑戦機会に恵まれ仕事に熱中できるベンチャー企業であっても、必ずしもエンゲージメントが高いわけではない。

 そもそも先に挙げたような要素は、従業員満足度が注目を集めていた時代から同様に重要視されていたのだから、感度の高い企業を中心に既にある程度改善されているはずである。にもかかわらず、現実として熱意あふれる社員が6%に留まっている。おそらく“見返り”も重要な要素ではあるが、それだけではエンゲージメントを高めるのに十分ではないということが分かる。