自分の「やりたいこと」を自覚できているか
「イノベーション人材開発」。聞きなれない言葉かもしれない。
だが、この言葉だけで、どのような人材をイメージしているか想像できると思う。組織において、イノベーション、つまり旧来を打破し、新しい扉を開く人材を育てていくには、ということについて、コンサルタントの視点で話していこう。
私はシステム開発会社A社で、組織活性化の支援をしている。ご支援の期間も2年目となったある日、お客さまから、社員と個別相談をしてほしいと依頼を受けた。組織活性化の活動のことでもいいし、他のことでもいい。同じ会社の社員には相談しにくいことを何でも、ということでカウンセリングのようなコーチングのような面談の時間を持つことになった。
面談されるクライアントのメンバーにとっては「何を相談したらいいんだろう」という戸惑いの中始まったが、始まってみるとさまざまな悩みや疑問が出てきて、対話をするだけでもクライアントの気付きにつながってくるから面白いものである。
さて、面談を続ける中で4人目に登場したのは、入社5年目程度の社員Bさんだった。最初はBさんも他の方同様、戸惑っていたが、そのうち「仕事が面白くない」ということを口にしだした。
Bさんは幾つかの不満を吐き出していたが、詳しく話を聞くと「やりたいことができていない」らしい。かといって、「やりたいこと」をうまく表現できないし、この会社では「やりたいこと」をできないと思う、という。
そこで、私はBさんの経歴を聞いて、今まで楽しかったことや面白いと思ったことを聞いてみた。どうやら、Bさんはもっとお客さまの近くで、お客さまに喜んでもらえるようなことを考えたり、会話することに喜びを感じるらしい。
Bさんの現在の業務も、もちろんお客さまのためにはなっているものの、Bさん自身の実際の業務は自社のオフィス内での運用業務で、自らお客さまのために何をすべきかを考えるきっかけをつかめていなかったのだ。
いやいや、どんな環境にあっても考えることはできるだろうと思われるかもしれない。しかし、「『お客さまのために何ができるか』を考えることに喜びを感じられる」ということをBさん自身が自覚していないのだから、きっかけをつかむのはそもそも難しかったのだ。