「やりたいこと」に気付くことは、本当の自分を見つけること
Bさんの変化は「やりたいことに自ら手をあげることができた」ということにとどまらない。現業の運用業務の改善についても、積極的に推進する姿が見られるようになったのだ。
それまでは上司との関係性も理由にして、与えられたタスクを推進するのみだったが、自ら改善計画を考え、他の人ともコミュニケーションをとるようになった。シャイな性格も手伝ってアグレッシブに進めていく感じではないものの、着実に改善を実行できてきている。
さて、Bさんの例からも分かるように、「やりたいこと」が自覚できると、やりたいことに今すぐ着手できなくても、目の前の仕事に対するモチベーションが湧いてくることは多い。
私はこの現象を「本当の自分を見つけられた喜び」に起因すると解釈している。
私は2019年に半年以上かけて心理カウンセラーのトレーニングを積んだが、そのトレーニングの中に「インナーチャイルド」と呼ばれるカウンセリングの方法論がある。
人の本性というのは小学校に入るくらいまでにある程度、固まってくる。しかし、その後の親や社会との関わりの中での出来事をきっかけに、自分の本性を自らが否定せざるを得なくなり、その結果、逆に生きづらさを抱えてしまうことがある。
その生きづらさを解消する方法として、自分が否定してしまった自らの本性に向き合い、「否定してしまってごめんね」と子供のころの自分を認めて抱きしめて自分の中に取り込むイメージワークがあるのだ。
Bさんの例は、そこまで大げさなことではないかもしれないが、「そうか、自分は本当はこんなことがやりたかったんだ」と気が付けることは、インナーチャイルドのような根本的な喜びに近いであろうし、近道でも遠回りでも自分がやりたかったことに向かっていけるということは、生きる喜びそのものでもある。