情報開示で「自らが変わる」意義を理解してもらう

 人的資本の充実は、自らが変わらないと解決できない課題であるが、自らが変わることと並行して、周囲の人たちも変わっていくことが必要である。

 そのために実践シナリオや実践ストーリーを考え、伝えていくこと(情報開示)により、周囲の人にも「自らが変わる」意義を理解してもらい、変わることで新しいものの見方・考え方を持つようにすることが重要になる。

 「ISO30414」(社内外への人事・組織に関する情報開示のガイドライン)では、指標とすべき人的資本項目が11分類58項目で構成されている。この項目を全て開示するのではなく、自組織の経営戦略に照らし合わせた人材戦略として重要視すべき項目を絞り込んで開示することが現実的かつ有効だと考える。

 人的資本の情報開示は目的ではなく手段である。つまり、経営戦略実行のための実効性ある打ち手に注力することが人的資本を充実させる。

 そこで、人材戦略を実現するために、重視すべき人的資本を充実させるための「実践ストーリー」が必要になる。

 その理由は、実践を通じて従業員・パートナーへの理解を促進し、行動を起こさせる(活動への巻き込み)ためである。加えて、投資家の判断材料として人的資本の充実の実践と経営戦略との連動を分かりやすく伝え、企業価値を高めるために実践ストーリーの明示が求められるからである。