◆良かった点
・ 売り手からの情報提供(話量)は適正であった
・ クロージングワードも頻繁に出ていた
・ 売り手からの質問は出ていた
・ 発声が聞きやすくスピードもおおむね適正であった

◆改善が必要な点
・ 「あの、その」といった曖昧な言い回しが多い
・ 同じ話題を深掘りし過ぎ
・ お客さまの使用実態などの情報収集をしないまま商品説明に入る
・ 買い手からの質問を促進できていない(一方的に話す)
・ 次のアポにつなげるための商談のまとめがない

③ スキル向上研修
 現状のスキル把握で改善すべき点が明確になったため、次は研修により各人のスキルアップを図った。ここでの狙いはオンライン営業スキルのバラツキをなくすことである。

 そこでまず、各人に②のスキル診断結果のフィードバックを行った。具体的には、各人別のフィードバックレポートを作成し、それを元に各人が改善すべきスキルと改善のために今後やるべきことを書き出してもらった。

 その上で、半日2回のオンライン研修を行った。研修では、講義よりも討議とロールプレイングが主な内容であった。討議では、診断したある方の商談(録画)をオンラインで見て、その商談の良かった点や改善点を検討した。「頻繁に投げ掛けを行っているのがよい」「このタイミングでなぜ、この説明をしているのか」などの意見を出し合った。こうすることで、抽象的ではなく具体的にオンライン商談で何をすればよいかを理解する。

 頭で理解できたら、次は具体的なアクションを習得するため、テーマを絞り込んだ上でロールプレイングを行った。例えば、「一方的な商談にならないよう5分に1回はお客さまに質問を促すロールプレイング」などといったテーマである。

 さらに、短期間でスキルが定着するような工夫も行った。1回目と2回目の研修の間に2週間のインターバルを取り、そこで1回目の研修で習得したスキルを実際の商談で使えるようにした。

④ 研修後の効果測定
 2回目の研修が終わった後、1カ月が経過したところで、再度コンサルティング会社に依頼して、②と同一の方法により効果測定を行った。

 効果測定の結果は、全体的にはオンライン営業スキルの底上げはできたものの、以下が改善点として残った。
・「 あの、その」といった曖昧な言い回しが多い
・ お客さまの使用実態などの情報収集をしないまま商品説明に入る
・ 次のアポにつなげるための商談のまとめがない

 底上げができたのは、2回のオンライン研修を通じて、オンライン営業として対面営業より明確に行わなければいけないことが、共通認識できたことが理由である。逆に、改善点が残ったのは、頭だけでなくアクションとして習慣付けていかなければならず、それには、本人の意図的な商談を繰り返す必要があり、もう少し時間が必要ということであった。

 以上が大手SIer A社の取り組みである。このように、進んでいる企業はオンライン営業に移行しただけでなく、改善のためのPDCAを回している。オンライン営業は、コロナの影響が一段落してもなくならないであろう。であれば、A社のように適用・進化のための取り組みを、今からでも始めることが必要である。

コンサルタント 坂田英之(さかた ひでゆき)

株式会社日本能率協会コンサルティング
経営コンサルティング事業本部 CX・EXデザインセンター
チーフ・コンサルタント

1991年日本能率協会コンサルティング入社。製造業、サービス業、情報 ・通信産業などのマーケティングおよび営業競争力革新を専門領域とする。営業マネジメントシステム開発、セールススキル評価および強化、営業部門情報武装化(SFA) 支援、ソリューション営業実践支援などのコンサルティングの経験を有する。