A社はこう、オンライン営業スキルを高めた

 A社の事例をみていこう。A社ではコロナの影響により営業全員のオンライン営業への移行が方針として決まった。使用ツールはZoomである。

 A社はIT業界ということもあり、一部の部門で既にインサイドセールスを行っていたため、オンライン営業への抵抗感はなかった。しかしながら、オンライン営業スキルについてはバラツキがあり、成約に結び付けられる人とそうでない人との差が大きくなっていた。

 そこで、営業企画部が主体となり、オンライン営業スキルのバラツキをなくすべく、以下の対策を行った。
① モデル部門の選定
② 現状のスキル把握
③ スキル向上のための研修
④ 研修後の効果測定

 以下で、それぞれの内容を詳しく見ていこう。

① モデル部門の選定
 A社では、対策の実証検証と進め方の標準化を行うため、ある領域を担当している20人のBチームをモデル部門として選定した。

 選定理由は、まず、部門長が取り組みに前向きであったこと。人員構成(経験)のバランスが、平均的であったこと。以前から一部でインサイドセールスを行っていて比較的早くからオンライン営業に移行できていたこと。さらにこのチームでは、同様に先行してオンライン営業を行っていた他の部門に比べて、成約率にバラツキが大きかったことを問題として抱えていた。

② 現状のスキル把握
 次にコンサルティング会社に依頼して、20人全員のオンライン営業スキル診断を行った。30分程度のオンライン商談をお客さまの了承を得て録画し、そのトーク内容をAIと専門コンサルタントが解析するという診断方法を用いた。

 まず、AIでの診断として、主に量的側面から以下のような診断を行った。
・トーク内の構成バランス(客観的根拠説明、主観的理由、具体的な理由・事例などの構成、話者バランスなど)
・質問回数(買い手の質問回数、売り手の質問回数など)
・クロージング語の利用量
などを、トークの中からAIが解析をした。

 もう一つの専門コンサルタント診断は、主に質的側面からの診断である。具体的な診断視点は、
・顧客対応マナー(声が聞き取りやすいか、画像の映りはよいか)
・インタビュー力(一方的な話になっていないか、深掘りできているか)
・顧客聴解力(状況を聞き取り、課題を顕在化できているか)
・個客提案力(お客さまから聞いた状況を踏まえて個別の提案ができているか)
・商品訴求力(お客さまの課題とひも付けて商品訴求が行えていたか)
・クロージング力(意図的に商談を次のステップに進められていたか)
などである。

 このような視点から、専門コンサルタントが録画された商談を解析した。

 診断を行ったところ、モデル部門では以下のような結果が出てきた。