出店できる立地や物件が広がった

 やっぱりステーキが人気を集めるもう1つのポイントが、「もうちょっとお肉を食べたい」という動機に向けた「替え肉」があることだ。例えば、「おすすめ赤身ステーキ替え肉」は100g500円、「ヒレステーキ替え肉」は100g750円、「BAサーロイン替え肉」100g800円という具合。

「ステーキをもうちょっと食べてみたい」という動機に向けて「替え肉」をラインアップしている

 替え肉というメニューがあることは初めて来店した人にとっては分かりにくいが、同店ではBGMにオリジナルチャンネルを設けて、その番組のDJが「替え肉はいかがですか?」と宣伝している。お客にとっては、ゆったりとした気分のままで、DJのトークから替え肉の存在に気付く、ということだ。

 義元氏によると「タッチパネルとオリジナルチャンネルの効果によって、客単価は1800円ほどになる」と予想していた。つまり、デジタル活用が顧客満足度を高め、客単価が上がる仕組みをもたらすということだ。

 義元氏は芝大門店のオープン当初の営業状況を捉えて「月商1200万円以上のペースで行くでしょう」と読んでいた。これでやっぱりステーキの「家賃比率5%」は十分に保つことができるというが、これもデジタル技術を活用していることが要因となっている。

 つまり、既存の客単価1300円では家賃の低い立地や物件を探していたが、デジタル活用で生産性が高まることによって比較的、家賃が高い立地でも「家賃比率5%」をクリアでき、出店が可能になる、ということだ。

 やっぱりステーキの仕組みは全店舗が一律ではなく、出店立地、物件に応じて適宜、改善がなされてきたわけだが、このような地道な取り組みを重ねてきた上で「実験店」の芝大門が誕生した。今後の展開では、さらなる顧客満足と生産性の向上のためにデジタル技術の活用が進められていくことであろう。