米国ウォルマートは広告収入が前年度比約2倍

 オンライン販売の大波が寄せる中、リアル店舗には「モノを売る」という従来の枠を超えた価値が求められるようになっており、新しい在り方を模索する動きが生まれている。米ウォルマートも顧客のビッグデータを生かした広告事業を強化し、収益源を多角化している。

 ウォルマートが広告事業に取り組み始めたのが2005年。ウォルマート・メディア・グループ(現ウォルマート・コネクト)というメディア事業専門会社を発足したのが始まり。米国で約4700店を展開するウォルマートは米国民の9割を半径10マイル圏内に捉える店舗網が強み。週当たりの客数は1.5億人に上り、店舗に設置されたモニターなどのデジタル看板やセルフレジの画面など約17万台を広告媒体として活用してきた。

 最近ではデジタル技術を活用したアドテク企業との提携を積極的に進める。1月末には「DSP」と呼ばれる広告配信プラットフォーム大手の米トレードデスクと提携。どのメディアにどのような広告を出すのか高速かつ適切に処理できるようにする狙いだ。プライバシーに配慮した上で顧客の購買データなどのデータも掛け合わせて分析し、広告の精度を上げていく。

 さらに2月には、デジタル広告スタートアップの米サンダーインダストリーズを買収すると発表。同社は条件に応じて必要な広告コンテンツを自動で生成するサービスが強み。例えば、化粧品で顧客の推定年齢などに応じた広告を生成して出し分けることが、低コストかつ即座に可能になる。新広告配信プラットフォームと同様に21年後半までに利用できるようにする。

 ウォルマートの21年1月期は広告収入が前年度比で約2倍、広告主の数は同2倍以上に拡大しており、さらに店舗のメディア化を進める構えだ。